神父の秘密
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「朝から口ごたえをしたんですよ、あの子」
神父に報告をするシスターの目は、神父に同意を求めたい色が強かった。
コーヒーを淹れ、シスターの前に置いた神父は、自分もぴかぴかの皮のソファに腰を下ろした。それから柔い物腰でコーヒーを一口。アロマを堪能した呼気を吐き出した。
「……そうですか、たくみと話をして見ましょう」
神父は微笑めば、シスターは泣きそうな顔をして頷いていた。
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「朝の姉川は気持ちが良いですね」
「さいこーだね」
神父に連れ出され、たくみは姉川を散歩していた。すると、灰色のしわしわが二人、堤防を歩いていた。どうやら、いつも座っている場所へ向かっているようだ。
―しわしわさんだ
すると神父が、
「川男ですね、やぁ、おはよう」
遠くから挨拶をすると川男は見事に一致した動きで神父へ首を向け、それから軽く会釈をした。それから揃ってたくみへ顔を向けてまた、軽く挨拶をした。
「おはよう」
たくみが挨拶を返すと、川男たちは満足そうに堤防へ腰を下ろした。
「神父、見えるのっ」
同士を得た心持ちで見上げると、神父はにこにことたくみを見下ろして言った。
「はい、元々この辺りには人ではない者が多くいます。彼らは恥ずかしがり屋なので人前に姿をあまり現さないのですが、どうしてか近頃は目にする事が多くなりました。ほら、あそこにも」





