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みのび
小さな扉は内側から勢いよく開け放たれ、飛び出してきたのは小さな子供、ではなく。たくみの掌に収まる小ささの、二つの火の玉だった。
それは下側が藤色の炎で、上に行くに従って段々と緑色の炎となって、ゆらゆらと小さく燃えている。
未知との遭遇で絶句しているたくみに、二つの炎は嬉しそうにゆらりと揺れた。
「ありがとう」
「ありがとう」
可愛い声で言うとふわりと飛び立って宙を漂いはじめ、薄暗い本殿をぼんやり照らす。
それをぼうっと見ていると、どたどたと足音が聞えてきて。巫女の装束を纏った老婆が目玉をひん剥いて目の前に現れた。
「このいたずら娘! 親の顔が見てみたいわっ、名は何と言う!」
白髪の巫女は開口一番、鬼の形相でたくみを叱りつける。驚いて肩をすくめたたくみだったが、それでも気丈に返した。
「たくみ、さんさい」
指で三を作って見せると、二つの火の玉はたくみの指先へ降りてくる。
「たくみ、」
「さんさい」
と、ささめきながら。
すると巫女の老婆は鬼の形相を崩して、今度は酷く慌てて言った。
「あぁ蓑火様、お控えくださいっ、この娘に悪気はなかったのですっ」
―あれが蓑火
かわらけの願いが叶った、と思った瞬間。巫女に肩を突き飛ばされてしまう。
「逃げろ、蓑火様に触れてはならぬ、燃えてしまうぞっ」





