ゆるゆるきゃんぷ
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待ちに待った週末。
肌寒さに目を覚ましたたくみは、掛け布団を肩までかけなおし、もぞもぞと窓を見上げた。
窓には美しい朝陽が差し込んでいる。
―きゃんぷ……!
心は逸るが、起床のチャイムはまだ鳴らない。それまではベッドにいないとならない、シスターのお仕置きはことある毎に繰り返されているのだから、楽しいキャンプの日にまでつまらないことでお仕置きを受けたくないと思うたくみは、静かに目を瞑った。
秋の気配が色濃い、キャンプには絶好の日和だった。シスターが留守番とくれば、余計に心が躍った。
神父の引率でバスに揺られて長浜まで出てくると、港には漁船が一艘待っていた。
「おはようございます船長、今日はよろしくお願いします」
神父がにこやかに話しかけたのは、船の上で忙しく作業をしている男の人だった。
捻りタオルの鉢巻をして、日焼けをした、太った男の人は神父に首を向け、白い歯を覗かせて笑った。
「おはようございます重さん、みんなもおはよう」
船長に挨拶をされ、兄弟たちは口を揃えて挨拶を返した。
「しかし今日は良い日和でよかったなぁ。さ、乗った乗った」
救命胴衣を着用し、椅子という椅子のない場所へ腰を下ろすと、船のエンジンは唸りをあげて出航した。





