いいもん? わるいもん?
―地下室の声は幽霊じゃなかった、けどモノホンがいた……
血色の悪い、傷だらけで、髪がぼさぼさの落ち武者を思い出して、頭まで布団をかぶって目を瞑るたくみだった。
翌日。シスターは朝から機嫌がよかった。誰も叱られることなく、兄弟たちは登校して行った。そしてたくみは、開かずの扉へ続く階段の前に一人佇んでいた。上の階へ続く急な階段は、昼間でも薄暗く、上の階の様子はたくみから見えなかった。
廊下の窓から差し込む朝日に埃がちらちら浮遊している中、じっと見上げているが、そこはとても静かで、動きは全くない。
昨晩、怪談話を始めたとき、小窓が動いたような気がして見上げた。兄弟たちが怖がるから適当に誤魔化したが……その時たくみは目撃していた。窓際に、人の頭のようなものがこちらを見下ろしているのを。
そのあと、地下室で首だけの落ち武者と出会った、とくれば。開かずの扉の向こうに彼がいるのでは無いかと、小さい頭で考えて、ここへやって来た。
―よし
意を決し、大きく息を吸い、小さい足を階段に掛けた。
埃っぽい階段を、ゆっくり、確実に踏んでのぼって行くと、だんだん、上の階が見えてくる。
そこには地下室と同じドアが一つだけあり、隙間から朝陽が漏れていた。
明かりが漏れている、それだけでたくみはほっとする。お日様の差し込む部屋に住むのだから、きっと悪い落ち武者では無いと、勝手に考えてしまっていた。





