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神父とシスターの掃除機
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お手洗いへ向かう途中のたくみは、ふと、足を止めた。
―何か聞えた
その音は地下室のほうから聞こえてくる。宿舎が静かだから、音の方向はすぐに分かった。
―泣き声?
泣き声が地下室から聞えたと兄弟が話していたのを思い出す。だから泣き声に聞えるのかも知れない、でも泣き声に聞える。
妙な声の正体は果たして亡霊なのか、たくみは知りたくてたまらなくなってくる。すると足は勝手に音のほうへと歩き出し、地下室へ続く階段を、足音を忍ばせてゆっくり降りていった。
真っ暗な階段を下りてゆくと、声は段々大きくなってくる。けれど、明瞭に聞き取れなかった。
地下に降りると、鍵穴から光が漏れている質素なドアが一つあった。
声と光に吸い寄せられて、忍び足で鍵穴から部屋を覗く。すると、部屋の中に居たのは神父とシスターだった。
―何やってるんだろう
神父はシスターを腕に抱いて、紙一枚通さないほど密着していた。二人は間近に見つめあい、寸分の狂いもなく相手の口めがけて自分の口をくっつけ、掃除機かと思うくらい吸いあっている。





