切妻屋根のドーマー窓
「おっし、怪談始めるぞ。まずは開かずの扉から」
さっきまでの不穏な空気はどこへやら、誰もが胸の中に勝ちを決め込んで、話に聞き入った。
「園の子供が、その昔に宿舎の探検に出かけてきり帰ってこなかった。園で不思議な事が起こり始めたのはその直後からだ。ほら、あの小窓の部屋、あるだろ」
男の子は玄関ポーチの上のほうにある、小さな切妻屋根を指した。そこにはドーマー窓が付いている。
「あの部屋のものが勝手に動いたり、ドアが勝手に開いたりするんだ。誰もいないのに玄関の呼び鈴が鳴ったりもする……」
そして男の子は押し黙り、神妙な表情で俯いてしまう。
一体どうしたのだろうと子供達が顔を見合わせていると――
男の子は泣きそうな顔で言った。
「……それに俺、声を聞いたんだ、子供が泣くような、気味の悪い……多分だけど、その子の亡霊じゃないかって、思ってる」
その時、ドーマー窓が開いたような気がしたたくみは突然そちらへ首を向けた。その刹那、たくみの挙動に驚いた子供達は奇声を発して抱き締め合い、恐る恐るドーマー窓を見上げている。
「たくみっ、急にどうしたんだよっ」





