元は人
“うん、鍛冶知りたい”
「じゃあ、まずは鍛冶が何たるかを教えよう」
こうして、一本たたらの鍛冶講座が幕を開けた。
「鍛冶ってのは、鉄を加工することだ。例えば、刀、鉄砲、鎌、鍬、鍋……鉄の加工に関することは全て鍛冶屋の仕事さ。鎌や鍬の柄、鍋の蓋も作ってやったりするから、木工も仕事に入るかもな」
「ものづくり、かっこいい」
「あぁ。俺もそう思う。だから俺は鍛冶職人になったのさ」
“ねぇたたちゃん、”
「なんだ?」
“たたちゃんは、人?”
「んーや。これでも妖怪だ」
“生まれたときから妖怪?”
「いいや。元は人だった。ずっとずっと、ずーっと昔にな」
“どうしたら妖怪になれるの”
「なんでだろうなぁ、ずっとずっと鍛冶職人をしていたいっていう、未練みたいなものがあったから、かな?」
“みれん?”
「諦めが悪い、って事かな」
“あきらめられないくらい、鍛冶が好きってこと?”
「そー! その通り」
“それで、たたちゃんはどこからきたの? たくみはしぞーかからきた”
「俺の出身はな……って、たくみは静岡から来たのか。随分遠くからきたんだなぁ。で、何で国友へきたんだ?」
“めぐみのいえがさよならになったから”
「めぐみのいえってのは?」
“お父さんとかお母さんのいない子が暮らす家”
「ってことは、たくみにはててとかかがいないのか」
“ててとかか……”
「父親と母親さ」
“いない。おほしさまになった”
「まだ小さいのに、そりゃかわいそうな事をしたなぁ。そうかそうか、そういうことだったのか……あぁ、俺の出身だったな、俺ァ――」
鍛冶の話はどこへやら、互いの身の上話に花が咲くのだった。