40/381
良い子には禁句
*
公園で兄弟たちがサッカーに興じるのを、たくみはベンチに座って眺めている。その隣にはミュージアムから付いてきた一本たたらが座っている。
「どうだ? 俺に対して、なんか言ってみろ」
「たたちゃん」
「ってちげーよ、声に出したら元も子もないだろ、頭の中で俺に話しかけるんだ」
たくみは一本たたらに首を向けず、サッカーの様子をぼうっと眺め。
その頭の中では、一本たたらに話しかけていた。
“……ちゃん、”
「おー、その調子」
“た……ちゃん、たた…………ちゃ……”
「うまいうまい、俺の事を思って、俺だけに話す気持ちでいけ」
「うん、」
“……たたちゃん、……たたちゃん、たたちゃん、お○りの、”
「おおおおおおっっと! 良い子には禁句だぜ」
“つたわった!”
「おぅ、ばっちりだな。俺に話しかけたいときだけ、俺に伝わる。たくみがどこにいても、俺だけに聞こえるんだ」
“べんり”
「これで、人間どもに気味悪がられずに済むな」
“ほんと。ありがとうたたちゃん”
「いいってことよ。で、鍛冶について教えて欲しいんだったっけな?」