表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国友鉄砲鍛冶衆の娘  作者: 米村ひお
日吉神社の燈明祭
37/381

ぅいっ!

 声を出さなくても話が出来るようになったきっかけは、たくみが初めてミュージアムを訪れた、その翌週までさかのぼる。


 圭と共に二回目のミュージアムを訪れたたくみは、二階の展示室まで駆け上がった。そこで一本たたらと落ち合おうと思って、はたと気が付いた。

 一本たたらと話をすると、周りの人には独り言を話しているように見えるだろう。そうしたら圭が気持ち悪がるかもしれない、と。


 そこでたくみは考えた。

 首をひねって考えた、のだが。

 ……いい案が思いつかない。


 これではミュージアムに来た意味が半分無いようなもの。萎れながらも展示物を見て回っていると、一階から声が聞こえてきた。どうやら、園の兄弟が圭を迎えにやって来たらしい。


「圭ー、公園いこー」


「おー、でもさー」


 そう言いながら、圭は階段を降りてゆく。


「今来たばっかりだから、もう少ししたら――」


 圭の声は段々遠くなり、やがて聞こえなくなった。



 その時、薄暗い展示室の隅からひょっこり現れたのは一本たたらだった。


「よぉ、来たか」


「うん、でもお話しするの難しい」


「なんでだ?」


「独りごと言ってるって、怖がられる」


「ほぅ、そーいうことか」


 すると一本たたらはお尻のほうへ鋭い爪の付いた手を回し。お尻をまさぐるように体をくねらせて。


「ぅいっ!」


 何か引き抜いたらしく、体をびくつかせて痛そうな顔をしたあと――

 鋭い爪に摘まれた白銀の毛をたくみに差し出した。


「耳に入れろ」


 と、平然と言いながら。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ