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国友の燈明祭は日本一
「圭ちゃん、火がいっぱい」
台の上にお皿がずらりと並んで、小さな火が揺れる。
「あれは火皿に油を注いでとうしみを浸して、その先に火をつけたものだ」
「ひざらぁ? とうしみ?」
「火皿って言うのは小さなお皿で、とうしみは山吹の花の茎を乾燥させたものだよ」
「圭ちゃん物知りぃ」
「父さんが教えてくれたんだ」
「圭ちゃんの父さん、物知りだ、たくみも色々教えて欲しい」
「もう死んじゃったけどな」
「あー……たくみと一緒だね」
笑みを交して手を握りなおすと、圭は顔をあげて境内を見渡した。
「鎮守の森が燃えてるみたいだろ、父さんと一緒に来たこの祭りが俺は好きなんだ、日本一の燈明祭だって、父さんがいってた、俺もそう思ってる」
いつの間にか夜の帳が下り、火皿の灯りは圭の顔に影を落とす。
圭は樹上を見上げ、何かを探し――
「ほら、あそこ」
たくみの目線の高さまで顔を下げ、圭は木の枝を指した。そこにはふさふさの尻尾の生き物が、人目から隠れるように見下ろしていた。





