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さんさい、妖怪の定義を知る
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「あれなに」
「なんだろうな」
参道入り口の大きな行燈にも、絵が描かれている。力強い筆の運びで、髪の長い、くちばしの付いたへんてこな生き物が描かれていて、たくみと圭は首をかしげた。
「アマビエだ」
大行燈を見上げる周りの大人の声に、それがアマビエの絵だと知る。
「圭ちゃん、あまびえってなに」
大行燈をくぐるとき、たくみは圭に尋ねた。
「さぁ、俺もよく知らないんだ。けど、あの見た目はたぶん、妖怪じゃぁないか」
「ようかい?」
「俺らの目には見えない、あの世の生き物さ。不思議な力を持ってて、人を怖がらせたり驚かせたりするんだ」
「怖いね」
「でも、中には良い奴もいるって話だ」
ふぅん、と心の中で相槌を打つたくみは、参道のふちを照らす無数の火に、目を見張った。