日吉神社の燈明祭
「これ、たくみのな」
隣に座る圭に渡されたのは、木の枠に和紙を貼った、四角い筒状のものだった。
周りを見渡せば、兄弟たちはそれを手に、思い思いに何か描いている。
「これなに」
「行燈だ、白いところに自分の好きな絵を描いて、燈明祭の時に行燈として飾ってもらうんだ」
「あんどん……?」
小首を傾げているたくみに釣られ、圭も首をひねった。
「行燈は、そーだな……風で明かりが消えないようにする道具だ、これを被せれば火は消えないだろ」
「そっか、消えないね。ランプのガラスの部分みたい」
「ランプ知ってるのか」
「うん、せんせとゆるゆるきゃんぷした」
「ゆるゆる……?」
「うん、たのしーよ。たまにまじきゃん、そんでさばいばる」
「まじきゃん? サバイバルするのか?」
「薪拾って火を熾したり、ろーぷわーく、探検も」
「火熾し、出来るのか」
「ちょっと難しかった、せんせーが手伝ってくれたから出来た。目標はたくみ一人で火を熾せるようになること」
「サバイバルだな、」
「さばいばる、たぎる」
「サバイバルが好きなのか」
「うん」
「じゃあ、行燈にサバイバルの絵を描いたらいいんじゃないか」
「おぉ、いいかんがえ」
たくみは興奮気味に、筆を走らせた。





