国友鉄砲ミュージアムの怪
話に聞く鉄砲作りの様子は大変興味深く、中でも、鉄の板を叩いて筒状にする、という方法が不思議でならなかった。
「叩くと丸くなるの?」
館長に問うと、
「そうらしい。残念なことに、時代と共に鉄砲鍛冶の技術は失われてしまった。だけどここに鉄砲が現存しているということは、確かにその技術は存在していたんだよ。そこにロマンを感じずにはいられないねぇ」
熱く語る館長の言葉に、たくみの胸も熱くなる。
「鉄砲作ってみたい……ろまんだ」
歴女たくみの、新たな目標が決まった瞬間だった。
「それは素敵だね。だが、今の法律では鉄砲を製造する事はできないんだ、修理はできるがね。それに当時鉄砲鍛冶の細工場は女人禁制、神聖な場所とされていたんだ」
「にょにんちんてい?」
「はは、にょにんきんせいといってね、女の人は細工場に入ってはいけないと言う決まりがあったんだ。あの当時、志のある女の人もいたかもしれない。そんな根拠のない理由で夢を摘まれるなんて可哀想なことだと思うね」
たくみに実物の鉄砲を構えさせたあと、館長は思い出したように言う。
「そうだ、鉄砲作りの資料があるからコピーをあげよう。探してくるから、あとは自由に見て回るといい」
そして館長と神父は一階へ降りていった。
「よし」
たくみはもう一度展示物を見渡す。
一階と違って二階は薄暗く、一人になると少々薄気味悪い。周りに兄弟たちがいてもだ。すぐそこに使い込んだ鍛冶道具がずらりと並び、何かを摘む道具が目に入ってしまう。
あれで頬を摘まれたら、歯を抜かれたら……絶対痛い。
すると、視界の隅で何か動いたように見えた。
ビクッと肩を震わせたのだが……次第に好奇心がむくむくと湧いてきてしまう。薄気味悪いくせに好奇心が勝って、奥へ向かって歩き出した。