※はいいろのしわしわ
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翌朝。学校組の兄弟は登校していった。たくみの世話係をしている圭もその一人だ。
一方、たくみは未就学の兄弟たちとシスターに連れられて姉川沿いを散歩していた。
今日も残暑が厳しくなりそうな青い空には、ソフトクリームのような雲が浮かんでいる。
子供達はあちこちに気を取られながら、わいわい歩く。
たくみもその一人だったが、ふと視界の隅に見つけてしまった……堤防に人が二人、座っているのを。
それを眺めているうちに、たくみは釘付けになってしまい、一点を見つめてぼうっと立ち尽くす。
「たくみちゃん、どうしたの」
最後尾を歩いていたシスターは、棒立ちのたくみに問いかけると、たくみは一点を見つめたままぼんやり返した。
「……ひと、」
「人?」
シスターはたくみと同じ方向へ首を向けるが、堤防には誰も見当たらない。
「誰もいないわ」
不思議そうに言うと、たくみはおもむろに首を向け、シスターを見上げた。
「みまちがい」
歯を見せて笑うと、一番前を歩いていた子供が転んで、泣き出した。
「あらあら、大変」
シスターは転んだ子供の元へ駆け出す直前、たくみの背中へ視線を這わせた。
それが不審な感情を帯びていることを、たくみは背中で感じ取っていた。
けれどどうしても、たくみはそれを見ずにはいられなかった。
なぜなら、堤防に座る二人の肌は灰色でしわしわ、上半身は裸、下半身は葉っぱを巻いているだけ、所々生える髪は肌にべったり張り付き、やけに鼻が大きくて、目も開いているのかどうか定かでは無い――
得体の知れない人だったから。