さんさいのれきじょ
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「めぐみ園から、北条たくみを連れて参りました。ほら、ご挨拶を」
「ほうじょうたくみ。さんさい」
通された応接間で、先生に促されたたくみは指で三を作って見せた。
先生とたくみの前には、カソックに身を包んだ中年の男と、ベールを被り修道服を身につけた三十代くらいの女がいた。
「遠いところ、よく来ましたね、待っていましたよ」
関西訛りの男は先生とたくみを交互に見て柔和に笑い、膝を折ってたくみと視線を合わせた。
「私はこの教会の神父、木村重里です。神父、と呼んでください」
「しんぷ、たくみはれきじょ」
たくみは突然言い出してにかっと笑うと、神父は目を丸くした。
「れきじょ、ですか」
「せんごくじだいさいこー。お城見に行きたい」
「そうですか、実は私も戦国時代が好きなんです。よかったら、一緒に史跡巡りしませんか」
「する! やくそく」
「はい、約束です」
たくみが小指を出すと、神父は小指を絡ませた。
絡まった小指が離れると、女が腰を折ってたくみと視線を合わせ。訛りのない柔らかい声音で告げた。
「私はシスターマリー。シスターと呼んでください。たくみちゃん、これからよろしくね」
「うんっ」
「育みの家を紹介するわ。こっちよ」
シスターに連れられて、たくみは部屋を後にした。