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はぐくみのいえ
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チャペルの敷地内にある宿舎には、育みの家と書かれた木の札が掛けてある。
木造二階建て瓦葺の西洋建築で、規則正しく窓が並んでいる。
重厚なドアに、アーチ状の屋根が張り出したポーチが印象的だ。白く塗られた壁にはつたが絡まり、ぱっと見ただけでも古いとわかる。
「今日から此処があなたの家よ」
「私の家……おばけ屋敷みたい」
「これ、滅多な事を言うもんじゃありませんよ」
「はぁい」
たくみが素直に返事をすると、先生は腰をかがめて、囁いた。
「……でもわかるわ、先生もちょっと怖いもの」
たくみが先生に首を向けると、先生はいたずらっぽい笑みを見せ。次にしゃんと背を伸ばして前を向いた。
「さ、行きましょう」
「うんっ」
二人は手を繋ぎ、一歩踏み出した。