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国友鉄砲鍛冶衆の娘  作者: 米村ひお
迷い込んだ先
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みほとけのおぼしめし

 

 大鳥居、その先の石橋手前、最後は本殿横。それぞれに掲げられた大行燈を見て回り、その都度感嘆の声を上げてしばし見入ってきた。

 しかし、これだけゆっくり歩いていてもたくみと圭は会えずにいる。それに一本たたらどころか、人ではない者たちの姿を全く見ていない。


「ねえとうちゃん、私、神社で待ち合わせしているの」


 もどかしくなったたくみがついに切り出すと、藤兵衛は聞き返す。


「誰と待ち合わせだい」


「圭ちゃんだよ」


「お圭というと、徳さんのところの息子だな」


「とうちゃん知ってるの」


 嬉しそうに言うたくみに、藤兵衛は更に続けて、


「知ってるとも、小さな村だからみんなの顔と名前はわかっているさ。どれ、見かけたら教えてやろう」


 藤兵衛の穏やかな笑顔にほだされて心を軽くしたたくみは、藤兵衛と利乃助に手を差し出し、二人は微笑み返すと小さな手を取って歩き出した。



 本殿から拝殿へ、そして堀に架かる石橋を超えたところで、藤兵衛は大鳥居の下にいた男に声をかけた。


「やぁ徳さんに仁さん、こんばんは」


 中肉中背で細面の男と、同じく丸顔の男は揃って軽く会釈し。


「やぁやぁ藤兵衛さんに利乃助さん、こんばんは」


「こりゃあ藤兵衛さん利乃助さん、こんばんは。 ちょうど藤兵衛さんの噂をしていたところだよ」


 そう話した細面の男は「お前も挨拶をしろ」と、後ろでふざけあっている子供を突っついて、丸顔の男も同じように子供に言って聞かせている。


 藤兵衛もたくみの肩を抱いて挨拶を促せば、半歩前に出て挨拶をした。

 すると、徳の後ろからひょっこり顔を出したのは圭で、


「藤兵衛さんこんばんは! たくみ、やっと会えたな。お九も一緒だぞ」


 と満面の笑みで仁の後ろにいる男の子を引っ張り出した。


 大人の間をすぽんと抜けるように前に出たのは骨が太そうながっしりした男の子で、力持ちな雰囲気があり、その口調はのんびりしていた。


「藤兵衛さんこんばんは。お前がたくみか、俺は九兵衛ってんだ、よろしくな」


 この会話に驚いたのは藤兵衛と利乃助で、


「私の噂?」


「たくみ坊はもう友達が出来たのですか」


 不思議そうに二人揃って首をかしげてしまう。その様子を見ていた徳は、事の経緯を話して聞かせた。


「たくみとお圭が。そういう事かい」


 納得した様子の藤兵衛に、今度は仁が口を開いた。


「しかし藤兵衛さん、いつのまにこんな賢そうな子をこさえたんだい?」


 ―こさえる……


 九兵衛と圭と遊んでいたたくみだったが、こさえると言う言葉が際立って聞こえ、とても耳に引っかかる。


 すると、周りにいた女衆も仁の話に反応して振り向き、赤子をおんぶしている女房が口を挟んだ。


「あたしも知りたいねぇ」



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