ながはまじょう?
「今歩いてきた道、何という道か知っているかい」
初歩も初歩、地理的な質問から始めたが、それは耳を疑うような答えだった。
「小谷道。湖南から小谷城まで南北に伸びてる。北国街道の一部だよ。長浜城が出来るとあっちに大きな道が出来るけど、まだないでしょ? 小谷城があるんだものね。国友に暮らしていればそのくらいの知識はあるよ」
「ながはまじょう? それは一体なんだ」
思わず聞き返した格好の藤兵衛に対してたくみは、
「ねぇとうちゃん、たくみは預言者になった気分だよ」
にこにこ笑うばかりでそれ以上答えようとしない。
そこで藤兵衛は別の質問を投げかけた。
「そこには大きな屋敷があるんだが、何という屋敷か知っているかい」
小谷道を南に見て少し西寄りを指した藤兵衛の視線の先を目で追うたくみは、
「殿屋敷。なんていうお殿様か忘れちゃったけど、浅井様の家臣だったと思ったな。住んでいるの?」
「ああ、お住まいだよ」
この答えを聞いたたくみは「ふぅん」と何か思案するように腕を組んで口をすぼめて何か思案しているらしい。
「じゃあ、次の問いだ。あの山は何という山か知って居るかい」
次に藤兵衛が指したのは東にある一つ頭の飛び出た山だ。
「伊吹山だよ、それくらい常識」
たくみの自信の有りようを知る藤兵衛は、嘘偽りなく国友に住んでいたのだと悟り、胸中晴れやかになっていく。
「たくみの暮らしていた頃の国友村がどんな様子か是非聞かせてもらいたいものだね」
先の世から来たとのたまう不思議を受け入れた、そんな瞬間だった。
「いいよ。たくさん聞かせてあげる」
たくみはいつも通り、笑顔を絶やさず元気に答えた。





