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人間って  作者: きち
1/1

日常


透き通る窓から見える景色だけを眺めても

外の世界は分からない。

見えるもの全てが真実とは限らない。


答えはいつも謎のまま彷徨って、

真実はいつも時間と共に流れていく。


見えないものを見ようとするより

見えるものを見えなくする方が簡単。


都合のいいように、

全て書き換えて生活する。


何事もなかったかのように。


それでこそ、人間らしい

謎であるからこそ人間だ。

生き物の中で醜く汚く、

そして、輝くフリをする。


何事もなかったようにしても、

ふと思い出す。いや、思い出せと

誰かが言ってるような。


忘れたくても忘れられない

脳裏を駆け巡る声と仕草と顔と

きっと一生忘れない思い出。


ただ、もう二度と戻ることない

時間に「ごめんね」も言えずに

また、朝がやって来た。


重たい体をなんとか起こして

毛布をまとったままコーヒーを淹れる。


まだ薄暗い中、カーテンの隙間から

少しだけ太陽の光が射す。

コーヒーを片手にベッドに腰を下ろし

テレビをつけた。


聞き飽きたよくあるニュースや

毎日のように起きる犯罪ニュースに

慣れてしまっている自分自身が怖い。


ボーーッとニュースを眺めて

コーヒーも冷めてきた頃に

「7時になりました。次のニュースです」

ニュースキャスターが時間を知らせた。


「あっ、やべ」


寝癖を少し気にしながら、

洗面所で顔を洗い急いで歯磨きをして

毛布を肩から下ろし毛玉のついた

スエットからおろしたての制服に着替えた。


「…よし!」


洗面所の鏡の前でそういうと、

いつものリュックを背負い

最近買ったばかりの靴を履いて

外をでた。


今日から新しい学校に行く、高校二年生男子。

べつに、ワクワクドキドキなどない。

ただ普通に静かに過ごせたらいい。


そんなことを考えながら

家の前のコンビニを右に曲がると

同じ制服の赤いマフラーを巻いた女子がいた。


随分と年季の入ったスクールバックに

付いているウサギのキーホルダーが

歩く度にゆらゆらと揺れている。


彼女について坂をまっすぐ登ると

学校の校門が見えた。


「…ここかぁ」


ボソッと呟いた声が彼女に聞こえたのか、

後ろを振り向き、僕をじっと見て

また、前を向き校門から中へ入って行った。


白丘高等学校と書かれた文字を

校門の前で眺めて少し立ち止まり

彼女が見えなくなってから中へ入った。


職員室を探していると


「あっ、君が成瀬くん?

成瀬(なるせ) 隆也(たかや)くんかね?」


前から少しぽっちゃりなお爺ちゃん先生が

声をかけてきた。


「…はい、そうです。」


「あー、よかったよかった!

迷わずに来れたみたいだねぇ、ほっほ」


「自宅から、わりと

近かったのでなんとか。」


「そうかい、そうかい!

あぁ、私が君の担任の林だよ。今から

教室に案内するねぇ。」


「…お願いします。」


スリッパの音だけが

真っ直ぐの廊下に響き渡る。


「誰もいないんですね。」


「あぁ、もうすぐ朝のホームルームが

始まるからみんな教室に戻ってるんだよ。

…こっちだよ。」


先生が指差す方向に階段が見えた。

階段を上ると教室が4クラスほどある。


「…D-2」


「そうだよ、だから一番奥の教室だねぇ。」


教室の目の前で


「ちょっと待っててねぇ。」


ガラッ


先生だけが先に入っていった。

僕の説明でもするのだろうか。

そんなの別に要らないのに。


ガラッっとまた教室の扉が開いて

にんまりと笑う先生が手招きをして、


「成瀬くん、入って!」と言う。


「…はい」


僕が教室に入ると、

クラスメイトが騒つきはじめた。



「成瀬くん、自己紹介してくれる?」


「……成瀬です。成瀬隆也です。

よろしくお願いします。」


僕は教室の奥の壁を見ながら

自己紹介を済ませた。


「…うん。ありがとう。

では、成瀬くんの席はあそこだからねぇ。

みんな仲良くしてねぇ。」


「はーい」


どうでもいいような返事をする

クラスメイト。

どうでもいいような顔をして

窓際の後ろから二番目の席に座る僕。


「ねえねえ!!」


後ろから声が聞こえた。

振り向くと調子の良さそうな

男子がニカッと笑ってる。


「…なに?」


「俺、松本(まつもと) (りゅう)って言うんだ

よろしくな!」


正直、どうでもいい。


「ああ、よろしく」


「成瀬くんは、何部に入るの?」


横から二つ結びの女子が話に割り込んできた。


「あー部活はやらないんだ。」


「えーっ、勿体無いよ!竜と一緒に

サッカー部に入ったら?ねぇ?竜!」


「俺は別に強制しねぇけどな、

茜は強引すぎるんだよ!」


「あーごめんごめん!

でも、楽しいと思うんだ!

私、サッカー部の藤岡(ふじおか) (あかね)

よろしくね!」


うしろの席の二人はとても、面倒くさい。

早く席替えがしたい。

転校して初日に席替えの事を考えた。


ガタッ


隣の席の女子が急に席を立った。

寒いのか少し震えながら

下を向いたままか細い声で


「…先生、お腹痛いので

保健室に行ってもいいですか?」


と、先生に尋ねた。


「坂井さん、大丈夫ですか?

一人で保健室に行けそうですか?」


すると、彼女は大きく頷いて

ゆっくりと席から離れ、

一度も顔を上げずに教室を出た。


「…さぁ、みなさん

授業が始まりますよ!準備してください!

あぁ、成瀬くんは後ろの席の人に

見せてもらいなさい。」


「はい、」


「俺が見せてやるよ!」

なんだか偉そうな、竜。


「ありがとう…」


「机、引っ付けたほうがいいんじゃない?」

茜が机を移動させはじめた。


「あぁ、そうだね。」

僕も、机を移動させようとした時、

隣の席のつく


























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