6話 来訪者
襲撃事件のあった翌日。
再びピーマが現れ、愚痴のように被害状況をぼやいていた。
「くそっ、昨日の騒ぎで奴隷が数人逃げ出してしまった!あんの盗賊どもめ!!」
「まぁ落ち着けよオッサン。被害は最低限で済んだんだろ?」
「ええい、オッサンと言うでない!まぁ貴様の言う通り、逃げ出したのは5人だけだ。幸いなことに売り手が決まっていた訳でもないから、大した問題にもならんが・・・」
「なら良かったじゃねーか。で、今日は何の用だ?」
「チッ、クソ生意気な・・・。そうだ、今日は貴様らにお客が来る。全ての質問に、嘘偽り無く答えろよ!わかったな!」
「あぁ?客・・・?」
そう言い残すと、部屋を後にするピーマ。
みんなで首を傾げながらも、特に何もないまま時間だけが過ぎていった。
日が傾き、あたりが薄暗くなってきた頃。
やっとそのお客は現れた。
「お前ら、このお方は皇国近衛騎士団の三番隊隊長、フェルミ・グローレス様だ。昨夜の事件について尋ねたいことがあるそうだ!」
「初めまして、紹介に預かったフェルミだ。さて、早速だが昨夜の事について聞かせてくれ。なんでも、勝手に仲間割れを始めた挙句、頭目は転んで気絶した・・・との事だが。これは事実か?」
奴隷同士で顔を見合わせる中、パプリが口を開く。
「ああ、その通りだよ。あたいたちをどうするかで言い争いを初めて、仲間割れを始めた男達を偉そうな男が縛り上げたんだ」
パプリの言葉を聞きながら、顎に手を当てるフェルミ。
「ふむ・・・。どうするか、という争いの火種は具体的にどういった内容だ?」
「さぁ、よくわからないよ。1人が味見がどうのと言い始めて、あとは売るだの飼うだのと色々言っていたよ」
「なるほど、な。まぁありえない話ではないが・・・。部下の男達は、鎖で縛られていた。あの鎖はここにあったものか?」
「いや、お頭と呼ばれていた男がなんかしたように見えたよ。鎖はここのものじゃない」
ふーむと唸りながら、フェルミはしばらく考え込んでしまう。
その後ろでは、ピーマが雰囲気のせいか、やたらと汗を拭いている。
レンはパプリから喋らないようきつく言われていたので、大人しくしながらフェルミを観察。
そのあまりの美しさに、ちょっと見惚れながら。
「実は、だな。お前達が勝手に転んで気絶したという男。あの男の実力は、我々近衛騎士団の副隊長に引けを取らないんだ。その男が不注意で転び、挙句気絶したというのはな・・・」
パプリは一瞬驚いた顔をし、レンを見やる。
レンは慌てて首を横に振った。
そのやり取りを見逃さなかったフェルミは、レンに視線を移す。
「君はどうやら、何か知っているみたいだな。なに、別に君たちを咎める意図は無い。だから素直に教えてくれないか?誰があの男達を無力化したのか」
「ちょっと何を言ってるのかわからないですね。そう怖い顔をされても困ります」
レンがやれやれと肩をすくめると、焦ったピーマがなんとか状況を改善しようと動き出す。
「フェルミ様、1つ宜しいですかな?」
「なんだ、ピーマ殿。何か心当たりがあるか?」
「い、いえ。そう言う訳ではないのですが・・・。少し疑問に思った事が。その男は死んだ訳ではないのですよね?本人に直接聞けない状況なのですか?」
恐る恐るといった感じで、手をすりながら上目遣いで尋ねるピーマ。
その様子を見て、レンとパプリは内心きもちわるっと思った。
さすがに口には出さなかったが。
フェルミも若干顔を引きつらせつつ、なんか表情を取り繕い返事をした。
「何度聞いても、何もしらない。何も見ていない。関わりたくないの一点張り。うわ言の様に、もう女に手はあげませんと呟いている」
「な、なるほど・・・」
お手上げだと言わんばかりに、ピーマがうな垂れた。
フェルミは再び何か考え込むと、レンとパプリを交互に見て何かを決めたのか、独りでに頷いた。
「君たち二人だけ、別室で話を聞きたい。部屋を一室用意してくれ。それから、他の者は一切の参加を認めない。無論、ピーマ殿もな」
「は、はぁ・・・」
牢屋から出されたレンとパプリを引きつれ、ピーマはフェルミを応接室へと案内する。
部屋に入ったあとも、出て行くのを躊躇っていたピーマだったが、フェルミに睨まれるとそそくさと退散した。
部下へ外の見張りを命令すると、部屋の中は3人だけに。
「これで誰に聞かれる事もない。そろそろ話してくれないか?」
「だからあたいたちは見たことをそのまま話してるって言っているだろ?」
「残念だが、君たちの話には無理がある。あの男はたとえ棍棒で殴られようがほとんどダメージを受けないほど、頑丈な肉体をしている。転倒した程度で気を失うことなど、絶対にありえないんだよ」
「あ、当たり所が悪かったんだろ?!」
「そもそも仮にバランスを崩したとしても、あの男なら転ぶことはないだろう。よっぽど気を引く何かがあれば別だが、そんな話も聞いていないしな。つまり、君たちの話は嘘ということになる」
「ぐっ・・・」
まさかそこまでとは思っていなかったパプリは、なんとか話を取り繕おうと必死に弁明。
しかし言い訳をすればするほど、苦しくなるばかりだった。
ギリギリセーフ!!
『神と獣と精霊と。』
も先ほど更新しましたので、よければあちらもお願いします!