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34話 ありがとう


 目につく至る所に傷があり、顔にも治りきっていない生傷が多くある。

 フェルミとカティースが何をされていたのか、それはレンも身をもって経験したせいか、想像に難くなかった。

 信じがたい事実に愕然とその場に跪くレンに向かって、ボスはここぞとばかりに問う。


「お前、あの女……三番隊隊長と仲が良かったらしいな? あの女が使っていたという()がどこにあるか知らないか?」


 盾……? 龍騎盾ドラグーンのことを言っているのか……?

 その瞬間、レンの中で何かが繋がった。


 あの日。テントでみんなと話した時に、カティースに伝え損ねた事。

 竜と戦っている場所へ到着する寸前まで、誰かが二人を魔法で見ていた痕跡を感じたという事実を。

 戦いの様子を誰かが皇帝に伝え、皇帝はその力を欲したのだろう。

 フェルミはきっと、俺から貰ったお守りだからと渡すのを強く拒んだのだ。カティースもその意思を尊重し、共に口を閉ざした。


 だがレンにはわからないことがあった。

 レンが創り出したと知っているなら、最初から二人をネタに脅せば済むはず。だがそうはせず、処刑ができるようになったのはお前のお陰だと、確かに言った。つまり、レンが盾の創造主だとは知らないという事。

 ならなんで俺のお陰なんだ……? それが素直な疑問だった。


 もしかしたらまだ二人を救うチャンスがあるかもしれない。その一心で、レンはボスに尋ねた。


「俺のお陰って言うのは……?」


 話す気になったと勘違いしたのかもしれない。ボスは機嫌が良さそうに笑うと、顛末を教えてくれる。


「今朝、お前に首を見せただろ? アイツが皇帝の命を狙ったバカヤローさ。そしてここからが肝心なんだが、アイツは厳重に侵入者防止の結界が施された宮廷の中に転移してきた。誰かが手引きしなきゃ不可能だったって事だ」


 つまり何が言いたいんだ……?

 レンが理解していない事を察したのか、ボスは鼻で笑うと言葉を続けた。


「変だとは思わねぇか? 宮廷内に直接転移できるやつが、なんでわざわざ襲撃前に街中を歩いてるんだ? しかも、入り口の履歴にはアイツの入場記録は無い。で、お前に聞いてみようってことになったのさ。あとはわかるだろ?」


 ボスの言葉を聞いて、レンは自分の安易な発言で二人が処刑されかかっていることに気付く。

 あぁそうか。俺が見たってことはつまり、フェルミが知らないわけがない。

 なぜなら俺は奴隷で、俺を連れ出して一緒にいたことになっているフェルミも知っている、そう結び付けられてしまうから。

 俺のせいで……。


 レンがどうしようもない喪失感に打ちひしがれていると、老年の男が処刑執行前の最後の言葉を演説。


「この者達は自身の職務にあるまじき大罪を犯した。よってここで斬首刑を執行し、その後1ヶ月間晒し首としたあとモンスターの餌とする!!」


「「「「「うぉおおおおおおお!!!」」」」」


 民は口をそろえて歓声をあげ、「当然の報いだ!」「あの世でも苦しめ!」と思い思いに二人に罵声を浴びせながら、熱狂に包まれる。

 やがて処刑人が二人の横にそれぞれ立ち、巨大な斧を首筋にピタリと当てると歓声が鳴り止む。

 皆がその瞬間を見逃すまいと固唾を呑んで見守り、辺りは僅かな緊張感と期待と共に静寂に包まれた。

 そうして処刑人が大きく斧を頭上へと振り上げた瞬間。

 大勢いる観衆には目もくれずに、フェルミは遠くにいたレンに気付きジッと見つめ、レンもまたそれに気付き二人の目が合う。


 レンはきっと、フェルミたちは自分を恨んでいるに違いないと思っていた。

 無用心に渡した龍騎盾ドラグーンのせいで二人をこんな目にあわせ、知らせていれば何か変わっていたかもしれない情報を伝えられず、不用意な発言でに今まさに処刑されようとしている。

 だから憎しみを込められた瞳を向けられるだろう、そう思っていたのに。


 目があったフェルミは、にこりと微笑んだ。隣のカティースもレンに気付いたようで、同じように笑う。

 負の感情なんて一切感じさせない、今まさに自身の首に斧が振り下ろされる瞬間だとは思えないほどにいつもの穏やかな笑みを。

 それはまるでレンが無事だったことに心底安堵し、喜ぶように。


 だが無情にも、振り上げられた斧が二人の首目掛けて振り下ろされた時。

 遠く離れていたせいでレンの元にまで声は届かなかったが、フェルミは確かにレンへ向けて「ありがとう」と呟いた。

 レンも信じがたかったが、口の動きからフェルミが何を発したのかは理解できた。


 振り下ろされた斧。上がる血しぶき。響く歓声。

 そのどれもが今のレンには不快であり、ひどく心を逆なでする。


 どうして、どうして二人がこんな目に……。心優しい彼女たちがなぜこんな目にあうことになった? 俺が選択を間違えたからか? 俺の思考が甘かったからか? 俺が異世界をなめていたからか?

 そのどれもが正解かもしれないし、どれもがハズレなのかもしれない。

 ただ1つだけ解ることがあった。


 目に映る光景。耳に入る音。

 その全てがレンにとって、憎悪の対象でしかなかった―――。

更新が遅れてすみません……!

珍しく憂鬱展開が続き、中々筆が進まずorz

まだもう少しだけ続きますが、どうか宜しくお願いします……。

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