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1章 エピローグ


 純白の神殿。

 建物の外には影が存在するのに、一歩中に踏み込めば影の存在しない色の無い世界。

 何もかもが全て真っ白なその不思議な空間の主である神ゼデイドは、ソファーに腰掛けながら呼び出した部下が来るのを神妙な面持ちで待っていた。


「失礼します。お呼びでしょうか、ゼデイド様」


 扉がノックされ、入ってきた深い青髪の男。

 その顔を見たゼデイドは、より一層辛そうな、そんな顔をした。


「来たか……」


 ゼデイドのかもし出す雰囲気と表情を見た部下は、ニコリと微笑む。


「私に声がかかるまで、思っていたよりも随分と時間がかかりましたね。即断即決が得意なゼデイド様にしては珍しい」


「……やっぱり()()なのか」


 部下の反応に直感的に全てが事実であると悟ったゼデイドは、歯を食いしばり必死に感情を堪えながらも、我慢しきれずにソファの前に置いてあった小さな机を叩きつける。

 少し落ち着けたのか、フーと大きく息を吐き出すと部下に向き直った。


「なぜこんな事をした?」


「……」


 しばし沈黙が続き、答える気がない部下にゼデイドはとても悲しそうな顔を一瞬だけした後、すぐに顔を振って気持ちを切り替える。


「オレぁお前の事を信頼してた。頼りになる部下ってのはもちろんだが、それ以上に家族だと思ってたよ。だから最初にこの疑惑が出たとき、ぜってぇ信じねぇぞって思ってたんだ……。だが調べれば調べるほど、お前をかばう要素が減っていき、逆にお前がクロだって情報ばかり出てきやがる。なぁ、なんでなんだよ?! 雫に用があったのか? それともオレに恨みがあったのか?!」


「それで時間がかかっていたんですね。そんな心優しいゼデイド様に感謝し、その質問にはお答えしましょう。答えは、そのどちらでもない、です」


「ならなぜ――」


 ゼデイドが再び質問をしようとした所、部下の男は割り込むように言葉を投げかける。


「これ以上はお話しする事がありません。どうぞ、お好きなように処分なさって下さい」


「……そうか」


 ゼデイドはこの部下――レゼアンが何も話す気はなく、こう言った以上何をしようが決して口を割ることは無いと理解していた。それだけの長い付き合いがあったのだから。

 神の力を行使すれば……聞き出すことも出来るだろうが、天界の住人にはそれなりの抵抗力があり、特にレゼアンは優秀で全体的に能力が高い。無理やり心を覗こうとすれば、代償にレゼアンの命が失われるだろう。

 その決断は、まだ心のどこかでレゼアンの事を信じているゼデイドに出来るものではなかった。


 沈痛な面持ちで部下を呼び出すと、地下の牢獄に閉じ込めておけと厳命。

 すぐさまやって来た衛兵に手錠をはめられ、部下と衛兵に連れて行かれるレゼアンは、ふと何かを思い出したように立ち止まると、ゼデイドの方へ顔だけ向けた。


「そう言えば……()は一体()()なんでしょうね?」


 言いたいことはそれだけだったのか、再び歩みを再開すると部屋を出て行った。


 レゼアンの最後の言葉が妙に引っかかったゼデイド。

 部屋を出ると、歩きながら顎に手を当てて言葉の真意を考える。


「彼……ってことは男だよな。レンの事は調べたし、となると……雫を襲ったヤツの事を言ったのか?」


 首を傾げながらも、とりあえず調べてみるかとその足で書庫へ向かう。

 書庫には様々な情報が貯蔵してあり、管理者に襲撃犯の情報を開示してくれと指示すると、すぐに一冊の本を持って来た。

 お礼を言って受け取り、設置してある椅子に腰掛けると必要な情報を閲覧していく。


「雫を襲う前は……路上生活をしていたせいか、あんまり情報が無いな。ほとんど人と関わりを持ってないこと以外特筆する点はなさそうだ。個人情報はっと……ん? なんで情報がねぇんだ?」


 管理者の下へ戻ると、情報が抜けていることを指摘。

 困惑した管理者はすぐに裏へ引っ込むと、しばらくして慌てた様子で戻ってきた。


「記録が抹消されていて表示できない? なんとか復元できねぇか?」


 少し時間は要するが、おそらく可能だという管理者。

 すぐに作業に取り掛かってくれと頼むと、再び椅子に座り復元を待つ。

 しばらくして管理者が小走りで一冊の本を持ってやって来た。


「手間かけたな、助かったぜ」


 照れながら何度もお辞儀をしたあと、定位置に戻る管理者。

 それを見届けた後、改めて本を開くと驚愕の事実が記載されていた。


「元は天界に住んでいただァ?! 無断で下界に降り、その際に人間を殺めた罪で天界を追放――なんだとッッ?!」


 読み進めた先に書かれていた事実に、さらに驚くゼデイド。

 そこには死亡した人間の名前が書かれていた。

 宝條 時斗(ほうじょう ときと)真理架(まりか)杉本 正信(すぎもと まさのぶ)美紅(みく) と。紛れもなく、レンの両親達の名前。


「レゼアンはこれをネタに言う事を聞かせたのか……? ならなぜこれをオレに教える必要がある……。くそっ、ワケがわかんねぇぞ!」


 より一層謎が深まったことに我を忘れ、感情のままに自身の膝を叩くゼデイド。

 神の怒りに怯えて震える管理者にも気付かず部屋を後にした―――。

 

投稿が遅れてしまい申し訳ありません……!


これにて無事1章が完結しました。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました!


明日からは2章が開始します。

引き続きご愛読頂けると嬉しいです。

宜しくお願いします!

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