27話 崩壊
「フェルミ達が最初に相手したのは南からの大群だろ? それ以外からも遅れてモンスターが押し寄せてたんだよ。それだけ」
面倒そうに大雑把な説明をすると、フェルミのゲンコツが飛んだ。
「そんな適当な説明で納得できるかァ! ちゃんと説明しろ!!」
「お、おう……」
西に東、それに空からもモンスターの大群が皇都目掛けて向かってきていた事、それら全てを殲滅ないし撃退し、危機を免れた事。
途中で出会った男については、レンの個人的な感情もあり誰にも伝えていなかった。
空からもというのはパプリも初耳であり、頭の後ろに両手を回しながら口笛を吹くという、わかりやすい誤魔化しでなんとか乗り切ろうとするレンをジロリと睨む。
「そ、それで……規模は小さなものだったのかしら? 南では1000程度とされていたようだけれど」
「どこも同じくらいの数だったかな。なんかやけに強いやつらが何匹か混じってたくらい」
「なに?! それはこう、いろんな動物を混ぜたような見た目をしたやつか?!」
「あぁそうそう、そんなやつ。ほかのやつらと違って頑丈だし、力も強かったな」
「それほど大量の複合型が一斉に現れるなんて、何か大きな事が起こっているんじゃ……」
フェルミは深刻そうに何かを考え始めると、ブツブツと何かを呟きながら思案を始める。
しかしカティースはどこか信じられないような、そんな表情をしていた。
「貴方の力がとても強いのは、ドラゴンを討伐……もしくは撃退出来ていることから疑う余地はないと思うのだけれど……。その話が本当なら、一人で最低でも2000体は倒したという事かしら?」
「さぁ、数えてないからなんとも……。そんくらいだったような気もするけど」
「……フェルミ、この方の言うことを本当に信じても良いの? とてもじゃないけれど、素直に信じろと言われてはいそうですかとは言えないわよ?」
ふーと大きくため息をつくと、どうしたものかしら……と頬に手を当てて悩むカティースに、まぁ確かにレンはぶっ飛んでるからな……と遠い目をするフェルミ。
パプリがほんとに決まってんだろ! と抗議したものの、当然ながら聞き入れてはもらえない。
別に信じてもらえなくても良かったレンだったが、パプリが必死に自分をかばってくれている姿を見て考えを変えた。
「あぁ、そういやこれがあるわ。『魔法収納箱』」
空いていたスペースに手をかざし、魔法を展開。
ポンッと大きな箱を出すと蓋を開けて中を確認し、やっぱそんくらいはいそうだと二人を見て伝える。
「……ちょっと待ってくださる? い、今『魔法収納箱』と言いました?!」
「レン、お前ってやつはどこまで……!!」
なぜか中身を確認する前から驚愕する二人は、目に見えて解るほどにうろたえながら視線を何度も箱とレンの間で往復させ、時折二人で見詰め合ってはお互いの頬をつねったりしていた。
「ど、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも……! 常識外れな力だとは思っていたが、まさか『失われた魔法』までも使えるとは……!」
「貴方、その魔法をどこで習得したの……?! 『魔法収納箱』は習得方法が失われてから数百年は経つのよ?! 『古代魔法』を扱えるなんて国にしれたら……!!」
その後の二人の話を要約すると、今では扱える者の存在しない魔法は『失われた魔法』や『古代魔法』と呼ばれ、その中には強大な力を秘めているものも多いことから、国では些細な情報でさえ厳しく取り扱われる。
故に、行使できてしまうレンは存在そのものを賭けて、国同士が戦争をしかねないほどに喉から手が出るほどほしい貴重な生ける実験体という事だった。
「良いかレン、人前で魔法を使うときは十分に注意しろ! 特に『魔法収納箱』は絶対に使うなよ!!」
「その通りですわ! 国から追われることになりますよ!」
「お、おう……」
やっと事の重大さを理解したパプリも含め、全員が不安そうな顔でレンを見つめると観念したのか、わかったと頷き魔法は控えると約束。
ホッとした3人だったが、フェルミはふと違和感に気付いた。
自分とパプリはわからないでもないが、どちらかといえば最初は敵視している節すらあったカティースが本気でレンを心配していることに、だ。
「ふとした疑問なのですが、どうして団長はそこまでレンを心配してくださるんです?」
「……そうよね、不思議よね。大きな理由は2つですわ。1つは単純に命の恩人だからということ。そしてもう1つは……その……。あ、貴女のお友達だからよっ!!」
「……え?」
なぜか顔を真っ赤にするカティース。
そんな様子を見て、益々困惑し首を傾げるフェルミ。
話から置いてけぼりをくらったレンとパプリは顔を見合わせると、とりあえず一回外でとく? とジェスチャーで合図し、そーっと部屋を抜け出そうとするのだった―――。
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