23話 更なる変化
信じたくない事実に二人が呆けていると、落ち着いた様子でドラゴンが口を開く。
『ワシとしたことが、どうやらお前らを侮りすぎていたようだな。その宝具の存在を失念するとは、とんだ失態であったわ。だが次はない、それがどういう意味かわかるな?』
様子とは裏腹にその声音には怒気の色が多分に含まれていることから、内心はマグマの如く怒りで煮えたぎっている事が容易に想像のついたフェルミとカティースは、思わず固唾を呑んだ。
先ほどまでとはひと味違う、寒いとさえ錯覚してしまうほどの冷たい眼と強い殺意に、不意に自分が死ぬ明確なイメージが浮かんでしまい肩を震わせる二人。
そこへ新たな乱入者が現れ、フェルミは最悪の展開になったと内心で悪態をつく。
『やっと来おったか。貴様が遅いせいで、こっちは虫けらなんぞに言い様にされる醜態を晒したぞ』
その言葉に何かが繋がるのを感じたフェルミは、思わず叫んだ。
「あいつらを近づけてはいけない! 何としてでも止めないと!!」
咄嗟の事ではあったがカティースはしっかりと反応し、放たれた魔法は乱入者を見事に捉えたかと思われた。
しかしそこには即座に移動し、割り込んで盾となったドラゴンの姿があり乱入者は健在。
歯噛みするフェルミを他所に今だ状況が飲み込めないカティースは、魔法を連発しながら尋ねた。
「どう言う事ですの? あんなただの複合型、確かに面倒ではありますがドラゴンに比べれば可愛いものじゃありませんか」
「アイツは……私が相手していた複合型で、戦闘中に突如起こった地震の際、逃げられてしまいまして……。探しているときに戦闘音を聞きつけ、団長の下にたどり着いたんです。アイツには理解し難いほどに硬い鱗が生えていたので、もしアレがあのドラゴンと何か関係があるとしたら……と」
話を聞いたカティースも自分の中で合致する部分があり、ようやく状況が理解できた。
「それなら悪い知らせがありますわ。私が相手していたあのドラゴン、元は普通の複合型だったんですの。共食いの結果、あの姿に……」
「と、言う事は……」
『予想通りであろうな。もう魔法は無駄だ、見てみるが良い』
龍騎盾がそう呟き、カティースが魔法を止めるとその光景が目に飛び込んで来る。
魔法をものともせず、攻撃を食らいながらも複合型を捕食するドラゴンの姿が。
次第に変化が始まり身体が徐々に肥大化、二回りほど大きくなりその身体に鱗が生え揃っていく。
『これは分が悪いな。今のあやつはまだ下級とはいえ、中級に限りなく近いと言わざるを得ない。その力は先ほどまでとは比較にならないほど跳ね上がっているだろう』
絶望的とまで思われたドラゴンを相手にしている時ですら、余裕のあった龍騎盾が初めて漏らす弱気な発言に、二人は今自分達に迫っている危機の大きさを痛感させられた。
すでに変化を終えたドラゴンはフェルミ達をジッと見据え、逃がす気など更々無いとその目が物語る。
『惜しかったな? 先ほどの攻撃でワシの身体全てを消し飛ばせていれば、今頃お前達は生きて帰れただろうに』
あざ笑う様な声音で話しかけてくるドラゴンは、当初の余裕を取り戻し不遜な態度で一歩ずつゆっくりとした足取りで進みながら、まるで膨れ上がった力を試すかのように、ポウッと口から球弾を一発発射。
溜めはほとんど無かったにも関わらず、そのサイズは今までで一番大きく、当然ながら威力も最も高い一撃だった。
宙に浮いた盾が防ぎにいくがあっさりと弾かれ、3枚で勢いを殺してフェルミが受け止めようやく防げるという事実に焦りを隠しきれない。
「ほぼノーモーションでこの威力……。これで連発可能なら、とてもじゃないが防ぎきれないぞっ!」
「万事休すですわね……」
『残念なお知らせだぞ? ワシはさらに威力を上げる事も出来るし、今程度の威力でなら小一時間打ち続けられるわ』
会話が聞こえていたのだろうドラゴンが、不敵にそう告げた。
「そんな馬鹿げた話がある訳が……!!」
『ワシをなんだと思ってるんだ? 竜がお前ら人間の物差しではかれる訳がなかろう。ほれ」
言葉を証明するように、10発の球弾を連発。
7発目までは全ての盾を総動員して防いだものの、その威力の強さ故か浮いていた盾はほとんどが砕け散ってしまい残り3発が防ぎきれず、残った盾をなんとか間に割り込ませる事で直撃は避けたため腐敗こそしなかったが、威力までは殺しきれずに二人は大きく吹き飛ばされた。
かろうじて命こそつなぎ止めたものの至る所が傷だらけであり、各部でヒビや骨折しているのか中々起き上がることすらできずにいると、すぐ近くまでやって来たドラゴンが二人を見下ろす。
『ククク、お似合いの姿だな。どれ、まずは右足からいくか』
鋭い爪の先から毒々しい紫色をした液体を滲ませ、二人の足目掛けて飛ばすドラゴン。
動けないため避けることも出来ず、もう駄目かと思われたその時、何かが液体をはじく。
「ふー、なんとか間に合ったか」
フェルミとカティースが倒れている場所からやや後方、そこには待ち望んだ姿が在った。
精神的疲労やダメージが蓄積していたせいもあり、気が緩んだ二人の脳は回復に努めるべく、一時的に深い眠りにつくことを選択し、意識を手放した―――。
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