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17話 崩壊の序章2 前編


 フェルミが複合型(キメラタイプ)と激戦を繰り広げている中、時を同じくして離れた場所でも激闘の火蓋が切って落とされようとしていた。

 相対するは近衛騎士団団長、カティース・レイズリックと、複合型(キメラタイプモンスターが1体。

 拠点から少し離れたため、こちらは平野というより草原であり、これから死闘が始まるとは思えないほど爽やかな風が吹き渡り、足元に生える草や花がわずかに揺れている。

 そんな雰囲気に似つかわしくないと言わんばかりに、カティースは顔を顰めながらモンスターを眺める。


「本当に醜い姿ね……。せめてもの情けに、一秒でも早くあの世に送ってあげるわね」


 モンスターに侮蔑の視線を送ると、腰から下げたレイピアをスラリと抜き放つ。

 隙の無い動作に加えて強者のオーラを放つカティースに、複合型キメラタイプは無闇に近づくような事はせず、警戒の眼差しを向けつつ距離を一定に保ちながら周囲を歩き回っていた。

 

 カティースと相対する複合型キメラタイプは四足歩行であり、ライオンの身体と四肢に、強靭な顎を持つワニの頭部、太く長い尾はまるで爬虫類のソレ。

 背部はハリネズミのように鋭い棘で覆われ、ただ突進されただけでも身体に風穴がいくつも空くことは容易に想像がつく。

 だがそんなことはお構いなしと言わんばかりに、カティースはレイピアを構え接近すると容易に棘を切り裂いた。


「あら……。思ってたよりも柔らかいのね。少しガッカリだわ」


 本人としてはお試しのつもりで手を抜いて振るったにも関わらずあっさりと命中し、挙句予想より遥かに低い硬度にため息をつく。

 これならばある程度の防具を身につけている者なら串刺しにされるようなこともないだろう、それが率直な感想だった。


「とんだ見掛け倒しの武器ね。こんなのが上位種と呼ばれているなんて、どうなってるのかしら?」


 カティース自身は複合型キメラタイプと対峙するのは初めてであったが、噂で聞いていた強さとは比較にならない実物に心底うんざりし、こんなのを上位種に指定している連中にも幻滅を隠せなかった。

 当然ながら、自分が一般よりも遥かに逸脱した実力を持っていることを加味していないからこそ、なのだが……。

 複合型キメラタイプもたった一度のやり取りで実力の差を思い知らされ、すぐさま後方に飛びずさると大きく遠吠えを上げた。


「ワニの顔で遠吠えって、なんだかむちゃくちゃね……。まぁ良いのだけれど、最後くらい醜く足掻かずに潔く散ればまだマシだと思うわよ?」


 理解できるとは思っていなかったが、警戒態勢を解かずに自身を見つめるモンスターを見て、やれやれと首を軽く振るとその目に殺意を宿す。

 さっさと終わらせて次の獲物を探すとしよう、そう決めてからは早かった。

 すぐさま地面を蹴ると、首を跳ね飛ばすべくレイピアを振り下ろすが、複合型キメラタイプは咄嗟に身をよじってかわしてみせる。

 だがカティースは大して驚くこともなく、流れるような動作で心臓目掛けて剣先を伸ばした。


「あら……少し動きが良くなった? 今のをかわせるとは思わなかったわ」


 二撃目も避けられるとは思っていなかったのか少しだけ驚いた顔を見せるが、わずかに笑みを零すと残像が出来るほどの速さで高速の突きを何度も繰り出す。

 複合型キメラタイプは全てを避けることを諦めたのか、致命傷のみ避けて残りは攻撃を受けつつ、再び距離を取った。

 浅い傷はすぐさま修復が終わり、深い傷とてものの数分で完治。

 さすがのカティースもその驚異的な回復力にはやや驚いたが、それならばそれよりも早く屠れば済む話だとすぐに微笑を浮かべる。


「ただ長引くだけのことならつまらないわ。ほかに何かないの?」


 試すように追い詰めながら徐々に攻撃の勢いを増していくが、とくにこれといって変化はなく、これまでと見限ったカティースは冷たい目で複合型キメラタイプを見据えると、脳天目掛けてレイピアを突き出す。

 一段と速度を増した攻撃に複合型キメラタイプはまったく反応しきれず、これで決着かと思われたその時、真横から別のモンスターが攻撃をしかけて来た事で咄嗟に飛びのいたカティース。

 お陰で複合型キメラタイプは命拾いした訳だが、攻撃を邪魔された当の本人は内心かなりイラついていた。


「はぁ……。これだから群れる連中は嫌いなのよね。1が2に増えたところで大差ないと言うのに」


『グルルル……。ナラバ、サラニフヤセバヨイダケ』


 その言葉と共に、右から左から野を駆け複合型キメラタイプが8体現れ、合計で10体に。


「驚いたわ、まさか言葉を話せるだなんて……。獣のくせに頭は良いのね?」


 数が増えたことよりも、人語を理解していることのほうが衝撃だったカティースは、クスリと笑うとその姿をかき消す。


「ごめんなさいね。2だろうと5だろうと10だろうと、大差なかったみたい」


 消えていたその姿を現した彼女がそう発した直後、後からやって来た8匹の首がズルリとずれ落ち地面に転がった。

 カティースが音も無く辺りを駆け抜け、あっさりと首を切り落としたのだ。

 二匹だけ残したのは、そう宣言して絶望に突き落とすためだろう。

 だがこの選択が失敗だったと気付くのは、もう少し後の話―――。

またすっかり更新が空いてしまいました。

日々勉強がてら小説を読み漁り、書いては消してを繰り返しております。

個人的には少し良くなったかな……とは思っているのですが、やはり自分だと判断が難しいですね。

大して代わり映えないのか、むしろ悪くなったのか……。

まだまだ底なし沼から抜けられそうにないですorz

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