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13話 開戦


 あれからおよそ一時間が経ち、騎士団や傭兵たちが待機する皇都南の平野は物々しい雰囲気に包まれていた。

 目と鼻の先にはモンスターの大群が押し寄せており、あと数分もしないうちにかち合うと、誰もが用意に想像できるが故の緊張と興奮。

 ある者は武勲を上げるべく武器を握り締め、またある者は報酬のために命を賭ける。

 そんな一癖も二癖もある一同を取りまとめるのは近衛騎士団の団長であり、ザベルス皇国の誇る五傑の一人、カティース・レイズリック。


 「私からは1つだけ。各自、自分の身は自分で守りなさい。戦闘開始」


 「「「うおおおおおお!!!」」」


 合図に合わせて一斉に雄たけびを上げると、戦闘の幕が切って降ろされた。

 一同を置き去りに先頭を駆け抜けていくカーティスとフェルミは、互いに競い合うかの様に次々にモンスターを斬っては次へと狙いを定め、圧倒的な力の差で敵を屠る。

 修羅の如きその様相に新米の騎士や傭兵は目を奪われ、その隙を見逃さないモンスターによって蹂躙され命を散らす。

 人もモンスターも、どちらも一歩も譲らない混戦へと陥った。

 そんな様子をカーティスはちらりと眺め、ため息をついた。


 「戦場で敵から目を逸らすなんて、あれで良くここに来れたわよね。フェルミもそう思わない?」


 「アレは団長のところ、一番隊の騎士でしたよ。()()教育しなかったんですか?」


 「あら、そうだったかしら? おかしいわねぇ、()()()()一通りの動きは見せて教えたのだけれど」


 フェルミは返事をする事をやめると、まるで当り散らす様にモンスターの群れへと突っ込んでいく。

 というのも、団長であるカーティスは単独実力絶対主義者なのだ。

 協調性や助け合いなど戦場では不要であり、己の実力こそが全てを決める。

 たとえどれほどの強敵が立ちふさがろうと、一人一人が強ければ何の問題も無い。

 そう考えているが故に、弱者に寄り添うことも労わることも頭の隅にすら存在していなかった。

 

 先ほどの部下も、本人は教えたと言っているが何も理解できていないだろう。

 そうフェルミは考え、その推測は実際に当たっていた。

 形としてはきちんと見せてはいるのだが、そこに誰が見てもわかるように、などという甘えた考えは一切考慮されていない。

 結果、新入りの部下たちはカーティスの一連の動作などを目で追う事すら出来るはずも無く、ただただうちの団長はすごい! そう思うのが関の山。

 

 フェルミとは真逆に近い考えであり、彼女とて異議申し立てを行いたいのは山々なのだが、その実力は確かであり、カーティスとまともにやりあえるのは他の五傑くらいのもの。

 現状では誰一人として言うことを聞かせる事が出来ないのだ。

 唯一の可能性は皇帝直々の勅命だが、これも残念ながらアテに出来るものではなかった。

 現皇帝はカーティスの強さと美貌にほれ込んでいて、騎士団を自由にする許可を出しているのだから。


 同じ騎士団の隊長としてそれらを知っているフェルミとしては、この戦いで少しでも多くの部下や仲間達が生き残り、勝利を収められるよう祈りながら戦う事しか出来ない。

 それが彼女の苛立ちの原因であり、今の半ば自暴自棄にも近い特攻の理由だった。

 

 せめて少しでも多くの敵を倒し、後方の被害を最小限に。

 共に戦う仲間を思い身を挺した彼女だったが、神の悪戯イタズラと言うべきか、運命と言うべきか……。

 フェルミが暴れる場所へと近づく、巨大なモンスターの影がひとつ。


「なに?! 複合型(キメラタイプ)だと?!」


 複合型(キメラタイプ)、それは複数の生物の特徴を併せ持った異形のモンスターの総称。

 他を取り込むことで突然変異を起こした結果とも、弱いモンスター同士が1つの肉体を共有することで生存競争に打ち勝とうとした結果とも言われるが、実際のところ出自は不明。

 ただ1つだけ言えることは、多様な特徴がまるで掛け算のように上手く合致しており、その力は圧倒的な強さを誇る。

 騎士団の記録に残っている最も弱い固体であっても、騎士10人がかりでようやく討伐を行ったとあるほど。


 フェルミの目の前に現れた複合型(キメラタイプ)も、複数の特徴が見て取れた。

 蠍の長い尾と先端についた針、ゴリラの強靭な身体、熊の太い両腕、ゾウの大きな足、鋭い牙が覗く虎の顔。

 姿かたちはあべこべだが、その身から溢れ出る強者の風格は圧巻の一言。


 普段であれば一度退いて、援軍と共に戦うような相手。

 だがこの場において、後退はそのまま敵の進軍に繋がってしまう。

 大きく息を吐き出して腹に力を込め、覚悟を決めたフェルミ。


「……いいさ、私が相手してやろう。お前をこの先に行かせる訳にはいかないんだ」


「ガルルルオオオオオオオオオ!!!」


「……信じているぞ、レン。フェルミ・グローレス、いざ参るっ!!」


 人間vsモンスター、その中でも一際激しい戦いの1つが、今始まる―――。

すみません、すっかり更新が滞ってしまいました……。

職場でインフルが流行した関係で、とてもバタついてしまって><

だいぶ落ち着いてきたので、また少しずつ更新を再開していきます!

宜しくお願いします!!

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