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11話 崩壊の序章


ヘムゼに見送られて店を出た二人を、外の空気を吸って気分転換を終えたフェルミが出迎えた。

レンを見た瞬間に、再びその顔は心なしか辛そうに歪むことになったが・・・。


「結局その格好で行くのだな……」


「ああ。かっけぇだろ? あの兄ちゃん最高だぜ!」


「そ、そうか? なら良かった」


嬉しそうに語る姿を見て、フェルミは思わず笑みを零した。

レンがこれほど喜んでくれるなら、格好なんてどうでも良いじゃないか。

そう思えたのだ。


「さて、二人が服を選んでいる間に部下から詳しい話を聞く事ができた」


真面目な顔つきになったフェルミが、あらましを説明。


―およそ2時間後に、モンスターの軍勢が皇都を直撃


―その総数は1000以上であり、中には最低B級以上と思われる固体も有り


―目標は不明だが、真っ直ぐに皇都に向かっている事から回避は不可だと思われる


―現在偵察部隊が見張りをしつつ、数を少しでも減らすために遊撃を敢行


―近衛騎士団、及び志願兵、傭兵各位は皇都より1km離れた平野で迎え撃つ


「あたいもずっとここにいるけど、こんなことは初めてだよ……。何か良くない事が起きているのかって心配になっちまうね」


不安そうに拳を握り合わせながら呟くパプリの肩を、フェルミが優しく叩く。


「大丈夫さ、私達近衛騎士団がいる。それに、レンもいるじゃないか。何かあったって、きっと解決できる。パプリの回復魔法も頼りにしてるからな」


「そうだぜ、姉ちゃん。フェルミが全部片付けてくれるさ」


自分を頼ってくれるフェルミ、なぜか自信満々にガッツポーズを取るレン。

そんな二人に励まされ、自然と笑みが零れたパプリの表情からは不安の色が消え去った。


「さて、ひとまず移動しよう。まだ時間があるとはいえ、早めに着いておくに越したことはないからな。団長への挨拶も必要だろう」


「げっ……。そーゆーの苦手なんだケド……」


青ざめた顔で後ずさり、逃げ出そうとしたレンはあっさりとパプリに羽交い絞めにされる。

背中に胸が当たり、どことなく嬉しそうな表情を浮かべている所をフェルミが目撃。

ニヤニヤと笑いながら、どこか得心がいったように頷いていた。


レンは逃げられないようパプリがずっと引っ付いて監視。

離せと言いながらも満更でもない様子に、パプリもどことなく嬉しそうであり、役得であったようだ。

一向はそんな様子を楽しむフェルミの案内の下、騎士団に設置された転移用の魔法陣で平野に移動。

中央に構えられたテントに来ていた。


「団長、到着が遅れてしまい申し訳ありません」


「報告は受けているわ。なんでも、戦力になる助っ人を連れてきてくれるとか……。そちらの二人かしら?」


「はい。訳合って素性は明かせないとの事で、この様な格好で連れてきた事をお許しください。ですが、二人の身元は私が責任を持って保証致します」


「そう……。貴女がそこまで言うのなら構わないのだけれど、それほど腕が立つように見えないのはわたくしの気のせいかしら?」


まるで値踏みするかのような視線と共に、強烈な敵意を向けられたレンとパプリ。

その迫力は空腹のドラゴンに睨まれたような、そんな錯覚を引き起こすほど凄まじい。

抵抗することもできず足がガクガクと振るえ、呼吸もままならない。

一瞬のうちに意識を刈り取られそうになったパプリだったが、それを阻んだのはやはりと言うべきか、団長との間に割ってはいったレンだった。


「そんな態度を取ると言う事は、俺たちの協力は必要ないと受け取って良いんだよな? 悪いが、俺たちは別行動をとらせてもらうことにする。すまないな、フェルミ」


崩れかけたパプリに肩を貸し、テントを後にしようとするレン。

焦ったフェルミは、なんとか団長を説得しようと声をあげる。


「団長! いくらなんでもやりすぎです! 団長の眼光に耐えられるものなど、この国に何名いることか……! 考え直してください!」


「あら。ちょっと思うところがあったものだから、つい……ね。そちらの女性は回復が得意なのでしょう? 驚かせてしまってごめんなさいね」


あっさりと頭を下げたこと、分かっていながら二人を試したこと。

なぜそんな事をしたのか理解が追いつかず呆気に取られたフェルミとは対照的に、()()()()()()レンは足を止めると顔だけ振り返る。


「それだけの目がありながら、残念だな。俺たちは()()()だ。正解が見つかる事を祈ってるよ。それじゃあな」


レンが足をトントンと地面に2回叩きつけると、足元に魔法陣が展開。

二人を包み込むように浮き上がると美しい輝きを放ち、瞬間その姿が掻き消える。

役目を終えた魔法陣は淡い光を放ちながら光の粒子となって消え、辺りは何事も無かったかのように平静を取り戻した。


「あらあら、そんなつもりはなかったのだけれど……。まぁ仕方ないわね」


悪びれる様子もなく淡々と言葉を発すると、元の作業に戻る団長。

こうなった彼女には何を言っても意味が無いと知っているフェルミは、一礼するとその場を立ち去った。

その後姿を見つめながら、何かを考える団長には気付かずに―――。





いつも読んで頂き、ありがとうございます!

昨日も更新予定だったのですが、見事に寝落ちをかましてしまい更新することが出来ませんでした。

ごめんなさい!

つきましては、(ストックもまだ余裕があるので)本日2回更新で穴埋めしたいと思います!

12話は23時30分頃投稿予定です。

宜しくお願いします!

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