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9話 友達


フェルミが尋ねてきた翌日。

朝の仕事である農耕作業や飼育動物への餌やり、その他雑用を片付けて牢屋に戻される。

そこにはなぜか、見知った顔があった。


「……なんでいるんだ?」


「いてはまずいかな? なに、別に何かしに来た訳じゃない。そうだな……ゆ、友人に会いに来たのだ」


「そっすか……」


レンがジトーっとした目つきで眺めていると、別の作業をしていたパプリも戻ってくる。


「パプリ、遊びに来たぞ!」


「フェルミさん!?」


そう、ニコニコとした顔で椅子に腰掛ける女性。

皇国近衛騎士団の一員で、三番隊の隊長を任されているフェルミだ。


「ど、どうしてまた……?」


思わず警戒するパプリに、不思議そうなものでも見るような目つきを向けるフェルミ。


「む? 友達の元へ尋ねてくることがそんなに変だろうか?」


フェルミの発言に、パプリは首を傾げた。

それを見たフェルミはガクッとうな垂れる。


「ひどいではないか。昨日あんなに喋ったのだ、私達はもう友達だろ?!」


「そ、そうですね……?」


レンとパプリは、内心で同じ感想を抱く。

あ、この人同性の友人がいないタイプだ。

その予想は見事に的中していた。


「昔っから剣一筋でな、周りは男ばっかりだったのだ。だから私はとても嬉しいぞ!」


「は、はぁ……」


苦笑いを浮かべたパプリに気付く様子も無く、フェルミは興奮気味に目を輝かせている。

パプリも変なのに好かれたな。

レンは口には出さずにそう思いながら、自分には関係がないようだと仰向けに寝転がって小窓から空を眺めた。

今日も良い天気だし昼寝でもするかと瞼を閉じたその時。


「おい、ひどくないか? 友達を放って寝ようとするとは、意外と薄情な男なんだな」


「……は?」


レンが飛び起きると、ふて腐れた顔をしているフェルミと目が合う。

起きた事に嬉々とした表情を浮かべられては、二度寝する訳にもいかない。

キャラ崩壊しすぎだろ……。

思わず口から出そうになった言葉を、慌てて飲み込むレン。


「そういえば、今日はあの気持ち悪い男はいないんだな」


「ああ、おっさんなら本館のほうだろ」


自重する事無くひどい言葉が飛び交う光景に、パプリは肩の力が抜けたのを感じた。


「二人ともひどすぎだろ。それとピーマのやつなら、朝早くに慌てた顔をしながら出て行くのを見かけたよ」


「慌てた……?」


少し嫌な予感がしたレン。

詳しく聞いてみようと思ったところで、タイミング良く血相を変えたピーマが飛び込んで来た。


「た、大変だぞお前ら! ってフェルミ様?! ちょうど良い! も、モンスターの大群が押し寄せているとの情報がありました!」


「なんだと?!」


フェルミはすぐに通信用の魔道具を確認するが、騎士団からは何の連絡も来ていない。

それほどの一大事ならば、不通というのはおかしいのだ。


「何も連絡は来ておらんぞ。どういう了見だ?」


「ち、違うんです! 通信用の魔道具は今朝からメンテナンス中で、今日は一日使えないんです!」


「なに……?」


ピーマの言葉を信用すべきか悩んでいると、騎士が一名慌てた様子で飛び込んで来る。

騎士も同様に、ピーマと同じ内容を語ったことから事実である事は疑いようが無い。

フェルミへの連絡を終えると、次へ向かうと告げて足早に去っていった。


「到着予定はおよそ3時間後との事です! わしらは早急に避難しなければなりませんので、申し訳ありませんが面会はここまでにして頂きたい!」


ピーマにしては珍しく、強い口調でそう告げた事に一同は驚く。

パプリに至っては、夢なんじゃないかと自分の頬をつねるほど。


「そうだな、私も戻らねばなるまい。しかし、1つ頼みたい事がある」


「なんです?!」


逃げることしか頭にないピーマは、会話をなかなか終わらせてくれないフェルミへの苛立ちを隠しきれず、言葉を荒げる。

そんなことは気にもかけず、淡々と言葉を発した。


「レンとパプリの二名は置いていってもらいたい」


「ええい、そんなこと構いませんよ! って……はい?!」


「うむ、かまわないか。それは良かった。感謝する」


「い、いえ! ちょっとまってください! レンは良いですが、()()()()・・・」


そこまで言いかけたところで、慌てて口を噤むピーマ。

フェルミと視線が交錯する中、口を開きかけては思い悩み閉じる。

しばらくして、諦めた様に勝手にしろと言い残して、鍵を置いて部屋を後にした。

ピーマの退室後、ジッとパプリを見つめていたフェルミだったが、気持ちを切り替えるとレンとパプリを牢屋から出す。


「さて、昨日の部屋へ移ろうか」


応接室へ移動後、レンの予想通りにフェルミは協力を願い出た。


「モンスターの規模はわからないが、あの慌てぶりから察するに相当数いるだろう。戦力は一人でも多い方が良い。そこで、二人には私と共に戦って欲しい」


「はぁ……。言うと思ったよソレ。でもやだよ」


「正体がバレたくないのだろう?」


「ああ。さすがに混乱してるとはいえ、俺たちみたいなやつがいれば嫌でも目立つからな」


自身の格好を見て、首を振るレン。

ニヤリと笑みを浮かべたフェルミは、そう返答される事は予想がついていたのだろう。

解決策もすでに練っていた。


「変装をすれば大丈夫だ。私が共にいれば余計な詮索をされる心配もない。レンとしても、みんなを影ながら守れることに繋がる。悪い話じゃないだろ?」


「それはそうだが……」


「このまま避難した所で、そこでモンスターに襲われてしまえば正体を隠しきれまい。だが、皇都へ侵入される前に討伐できれば……」


「レン、あたいもこの話に乗るべきだと思うよ。ピーマが避難を選択するってことは、相当切羽詰ってる証拠さ。なんせ、近衛騎士団の隊長様の前ですら体裁を取り繕えないほどだしね」


しばらく顎に手を当てながら悩むレンは、大きくため息をついた。


「わかったよ。何ができるかわからないが、協力しよう。ただし、変装はバッチリ頼むぞ。ほんとバレたくないから」


「ああ! ありがとう、レン!」


満面の笑みを浮かべたフェルミに視線を合わせられず、レンはついそっぽを向いた―――。




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