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プロローグ


 とある寒い冬の夜。

 澄み渡る空気の中、月明かりが青白い光で辺りを美しく照らす。

 そんな寒空の下、月光もほとんど届かない、外灯もない薄暗い路地の一角で怪しげな会話をする二人。


 一人は足首近くまであるオーリブ色のロングコートのフードをすっぽりとかぶり、傍からは顔の確認が出来ない。怪しげな雰囲気からも、ファッションではなく故意に隠しているのだろう。

 もう一人は純白のローブを羽織り、目元だけを隠すタイプの仮面をつけていた。此方も同様に、その素顔を見る事が出来ない。


「ほ、本当にあんたの言うことを聞けば、俺を救ってくれるんだな?!」


「ええ。無事に達成できた暁には、貴方の願いを叶えて差し上げますよ」


「わかった! そ、それで俺に一体何をさせようって言うんだ」


「貴方に頼みたいのは――」


 説明された内容を用意していたメモに走り書きしながら、何度も確認しつつ頭に叩き込む。

 フードをかぶった男の頭の中にはすでに失敗の文字はなく、成功したあとの事しか考えていなかった。

 そんな様子を依頼主は何も言わず、ただじっと見つめている。

 細かい説明を終えると、自分の中で具体的なイメージが固まったのだろう。


「必ず成功させるから、約束の準備をしておいてくれ!」


 自信満々にそう叫ぶと、男はブツブツと何かを呟きながら踵を返し駆けて行く。

 すぐにその姿が闇夜に消えると、残された依頼主である仮面の男はチラリと男が去っていった方を一瞥。ため息をつくと、目の前の空間に人一人が通れるくらいの裂け目を作り出す。

 男は無言のまま裂け目を潜り、その場から忽然と姿を消した。


 洋風の家具やインテリアが置かれた、白を貴重としたお洒落な部屋。

 そこに裂け目が現れ男が出てくると、部屋の主だと思われる淡い桃色の髪が目立つ、美しい女性が彼を出迎えた。


「おかえりなさい。 ……結果はどうでした?」


 少し不安げな表情でそう尋ねながら、中央に設置されたテーブルへと促す。

 男は仮面を外しローブを脱ぐと椅子に座り、ニコリと微笑む。

 その姿は深い青色の髪が特徴的な、知的な雰囲気を纏った優しそうな男だった。


「今の所順調ですよ。特にこれといった問題も起こらず、予定通りです」


「そう……」


 憂い気に影を落とす女性。

 男はスッと立ち上がると、テーブルの横に置かれていたワゴンへと近づき、慣れた手つきで紅茶を淹れ女性の前に置いた。


「大丈夫です、必ず成功しますよ。私の()()が外れたことはないでしょう?」


「ええ、そうね……。貴方の力を信じています。……良い匂い。これはリンゴの香り?」


 女性はカップから漂う紅茶の香りをひとしきり堪能すると、そっと口をつける。

 

「今日はカモミールにしてみました。甘酸っぱいリンゴの香りで少しでもリラックスできれば、と」


「フフ、ありがとう。とても落ち着きますね」


 僅かに顔を綻ばせると、少し緊張が解れたのかふーと大きく息を吐き出した。

 女性の様子を見て安心した男も、自身の分の紅茶を淹れると再び席に着く。

 二人ともしばらく無言のまま、ゆったりとした時間の中香りや味を楽しんだ後、女性が独り言のように、小さな声で零した言葉。


「あとは()次第なのね――」


 窓から見える美しい星々よりも更にもっと遠くを見つめるような、そんな遠い眼差しで外を見つめる姿に、男はふっと笑みを浮かべた。


「そうですね。ですが()はとても強い意志を持っています。自分の夢を、希望を、望みを叶えるという覚悟も。そんな彼なら、必ずや成し遂げてくれると信じましょう」


そう言って、男も女性と同じ方向を見つめ続けた―――。

 

 

今更ですが、プロローグを追加しました!

少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。

宜しくお願いします!

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