第5話
渡部を背負い、学園へ駆け出す。
鳥型アンダーグラウンダーから逃げる人達を掻き分けなんとか学園に着いた。
学園のシンボルである時計塔が破壊されていた。
生徒や学園に避難していた人達は既に逃げた後らしい。
渡部は俺の背中から降りると、鳥型に対し手を向ける。
一瞬力んだ様に身体を振るわすと、手の平から光線が鳥型へ向った。
だが、明らかに光線が弱い。
かめは○波が、波○拳になってしまった。
それでも、鳥型に当たると鳥型はよろめく。
今ので、気付かれた。
「くっ、まだ」
渡部はそう呟くと、もう一度手の平を鳥型に向ける。
おかしい、鳥型は確かにこちらに気付いたようだが、そのまま俺達を監視しているようだ。
アンダーグラウンダーはこれまで攻撃されようが、攻撃してきた物には関心を持たず、とにかく目立つ物の破壊を行いを行っていた。
それが、初遭遇ではあるが、この鳥型はこちらを見ている様にしか思えない。
『み・け・、せい・・しの・まし・』
なんだ、今のおぞましい声は⁉
「渡部、今の声は⁉」
「えっ?声なんて聞こえないよ!」
なんだって、でも今確かに・・・
渡部は両手の平を鳥型に向ける。
再び力んだように見えたが、何も出ない。
「はぁはぁ、駄目だ。」
凄まじく体力が削られていたのだろう。
渡部はその場に膝をついてしまった。
「渡部、ここは危ない。逃げるぞ!」
俺は、渡部の前にしゃがみ、そのまま渡部をおぶる。
「ご・め・・ん・・・」
渡部は荒い呼吸をしながらそうつぶやく。
『みつけた、せい・・・のた・・い!』
はっきり聞こえた!
あの鳥型アンダーグラウンダーだ!
クチバシを動かしたりする様なしゃべってる様な動きはまるでないのだが、直感であの鳥型が発した声だとわかった。
一体、何を見つけたというんだ。
俺はその場から逃げ始めた。
その時だ、鳥型が急接近し始めた⁉
「なっ⁉」
相手は大きすぎて紙一重で避けれるものではない。
渡部には悪いが、壁になりそうな瓦礫の影に彼女をおぶりながら飛び込む!
鳥型が通過する際、翼の先端が瓦礫をかすめる。かすめただけだが、それでもかなりの威力であり瓦礫と共に吹き飛ばされた。
瓦礫が盾になってくれたおかげて大したケガはなかった。
「渡部! 大丈夫か⁉」
「うぅ・・・」
唸り声をあげたので生きてはいるが、いまの衝撃で失神したようだ。
そこは女の子だ。かなり疲労していたし、攻撃力が凄くても体力と防御力は並の女子といったところか。
ちっ、俺がおとりになって、この鳥型を学園から離すようにしないと!
旋回し、再びこちらに向かってくる鳥型に「おらぁ! こっちだ!」と挑発をかけすぐに逃げ出す。
しかし、鳥型は挑発に乗らず、ピタリと止まる。
渡部を残した場所だ。ヤバい。
全速力で戻る。
鳥型が足を上げる。渡部を踏み潰すのだろう。
「やらせるかよ!」
滑りこみ彼女を抱きしめそのまま転がる。
避けることが出来た!
すぐに立ち上がり、お姫様抱っこの様な形で渡部を連れて逃げる。
何故かこの鳥型は渡部を狙っている。
今までのアンダーグラウンダーからはまるで違う動きだ。それとも鳥型アンダーグラウンダーは攻撃してきた者を攻撃対象にするのだろうか。
ビョオ! っと、空気が荒ぶったかと思うと鳥型に先回りされた。
くそっ、スピードが違いすぎる。
『み・つ・け・た、せ・い・せ・ん・し・の・た・ま・し・い』
はっきり聞こえた。
せいせんし 聖戦士で良いのか? そして魂?
よくわからんが、この鳥型は本能ではなく理性を持っているようだ。
人と同じく考えて行動出来るアンダーグラウンダー。
これは逃げ切れるか不安になってきた。
鳥型は両翼を広げる。
広げただけで、そこから防風が発生した。
上手く立っていられない。
ザシュ!
嫌な音がし、右腕に熱さを感じる。
右腕が出血していた。
ザシュ! ザシュ!
続けざま2回。
右太ももに2本、大きな羽が刺さっていた。
この暴風にあの鳥型の羽が交ざっているのだ。
とっさに渡部をかばう様に抱きしめる。
しかし、羽は次々と背中、もも、尻に突き刺さったりかすめたりする。
ヤバい、このままだと、せめて渡部だけは助けてくれ!
神様!
ボォウン
不思議な音がすると暴風も翼も飛んでこなくなった。
いや、音はあるので暴風は続いているようだが。
俺は振り返ってみた。
そこにあったのは、光。
光の盾だ。
この盾が暴風と翼の弾丸から俺達を守ってくれていた。
「い、入江君?」
真那が気付いたみたいた。
俺に抱きしめられてるのが恥ずかしいの、顔を真っ赤にしている。
「真那、ちょいと待っていてくれ。今すぐにあの鳥野郎をぶっ潰すから」
そう言うと俺は真那から離れ、光の盾に近づく。
何故か知ってる。この盾の扱い方を。
盾に手を添え鳥型に向けて気を放つイメージをする。
盾から光りの衝撃波が発せられ、鳥型を墜落させる。
次に右腕を挙げ手の平を空に向ける。
その動きに合わせ、盾も弧を描いて浮き上がる。
ちょうど盾の正面と空が見合わせる状態になる。
そして俺は墜落しもがいている鳥型に向け右手を降ろした。
光りの盾もその動きに合わせミサイルのように鳥型へ直撃する。
鳥型は一瞬にして破壊され、砂のように崩れるのだった。
俺は盾を引っ張るイメージをする。
地面に突き刺さった光りの盾は俺の手元に来る。
後は待機しろとイメージを送ると光りの盾は消えた。
「入江君、今の光って異能?」
真那が訪ねる。
俺は首を振り否定する。
「記憶がちゃんとしてないから、なんとも言えないが、あれは武器。俺専用の武器。イージスって名前が付けられている。そんで、俺って、もしかするとこの世界の人間じゃなさそうだ。異世界から召喚されたみたいだ」
言った通り記憶があいまいなので、実際のとこ確信は持てないが、そうであると感じる。
「それから、俺がお前の勇者らしい」
あの天使のネーチャンが言ってた通りだ。
誰を守っていくのかは、自ずとわかる・・・か。