第4話
アンダーグラウンダーが初めて目撃されたのは約半年前。
茨器県にある筑技山付近であった。
当時はアンノウンと呼ばれていた。
破壊のみしか意思がないかのように、目前にある筑波山を崩していた。
すぐに国防軍は動いた。
県内にある陸軍と空軍は、いつでも対処できる。
しかし、政府は様子見を指示した。
その間にもアンノウンは筑技山を破壊し続ける。
破壊し・・・破壊し・・破壊し。
2週間程で筑技山は消えた。
この様子は全国に報道された。
この2週間、政府は何をしていたのかは定かではない。
謎の生物を生け捕りにするための作戦を考えていたのか、それとも他国になにかしらの圧力をかけられていたのか。
筑技山を破壊した後、アンノウンは徐々に市街地へ進行していった。
茨器県は原子力発電所を持っていた。
アンノウンがこのまま進むと原子力発電所にたどり着くと判断。
未だに様子見を指示する政府を無視し、国防軍は動いた。
アンノウン1体に対し、茨器県にある陸軍と空軍の全火力に、アンノウンは破壊された。
アンノウン討伐はマスコミにより生中継されていた。
死骸回収は後日となったが、次の日に千波県でアンノウンが確認。
その次の日は山城県で確認。
その後も毎日1体づつアンノウンが発生。
発生の仕方が、山岳部付近であること、そして地下から現れるということが解り、その頃からマスコミからアンダーグラウンダーと名付けられ報道されていった。
テレビでは、毎日の様にアンダーグラウンダーに関する事が、特に国防軍がアンダーグラウンダーに勝利するシーンがよく放映されていた。
山岳部付近に近づかないこと、そして国防軍がいれば問題ないと国民のほとんどは思った。
アンダーグラウンダーをお笑いのタネにするような番組もあったほどだ。
それほど、国民の中でアンダーグラウンダーは驚異に思われていなかった。
しかし、マスコミは国防軍がどれだけの苦戦を強いられ勝利したのかを放映せず、ただ勝利した場面のみしか放映していなかった。
毎日のように出現するアンダーグラウンダーに対し、兵器の消耗が追いつかなくなってきた。
在日米軍にも助けを求め、なんとか対処してきたが、アンダーグラウンダー発生から約3ヶ月経つ頃、世界中でアンダーグラウンダーが発生し始めた。
アメリカも例外ではなく、本国で発生したアンダーグラウンダー討伐のため在日米軍は徐々に日本から撤退。
この頃から報道番組もアンダーグラウンダーの驚異を訴えかけるようになったが、対処しきれなかったアンダーグラウンダーが都市部にも進行するようになってきた。
一部の国民は徐々に追い詰められ、国防軍は少なくなった火力で何とかアンダーグラウンダーに対抗するのだが、進行を許してしまうのだった。
そして、今に至る。
「入江君、来るよ!」
4足獣型のアンダーグラウンダーが迫ってくる。
といっても、俺と渡部を狙ってるわけではない。
まるでカバやゾウに似た身体、そして本来頭があるはずの場所には何もなく、ただの絶壁になっている。
そして、その絶壁に巨大な人のくちびるに似た口と、その上に目と思われる真っ黒な点が2つ。
動きはユックリに見えるが、巨体であることから1歩で2〜30メートルは進んでるだろう。
この辺りの避難は既に完了しており、俺ら以外に人影はない。
このアンダーグラウンダーの目に付く目立つ物・・・ここでは確実に月詠学園だ。
渡部が右手をアンダーグラウンダーに向ける。
手の平から破壊光線が出る。
アンダーグラウンダーは光線に貫通され、膝から崩れ落ち動きを止めた。
しばらくすると、貫通部分から砂のようにくずれさった。
「凄いな。ってか、片手でも撃てるのか」
「今朝のは3体も出たから両手で破壊力をあげていただけ。でも、流石に疲れたわ。1日に4体も現れるなんて。かなり国防軍が取り逃がしてるのかしら」
「だいたい、どのくらいの頻度でこの町に現れるんだ?」
「アンダーグラウンダーがこの町にも現れるようになったのは2ヶ月くらい前からね。それでも週に1体から3体程度。今日みたいな出現率は初めてだわ」
かなり疲れているみたいで、ちょうど良い高さの瓦礫に腰をおろした。
「大丈夫か、しばらく休んでから戻ろう」
「うん、そうする。ところで危険なのに、何で付いてきたの?」
「あーなんだか、お前1人に背負わせてるみたいで、ほっとけない」
「いても特に役立たないのにね」
クフッと笑われた。
「でも、ありがとう。今朝も言ったけど、この異能は誰にも知られたくなかったんだ。なんというか、直感的に」
「まあな、こんな能力を見られたら普通の奴なら気味悪がるだろうな、それに悪用しようとお前を付け狙う奴が・・・っと、スマン」
「別にいいよ。確かにそうだと思うし。でもね、入江君に知られたのに大して気にならないんだ。それどころか、知られて良かったなんておもって・・・入江君!!」
なんてことだ・・・
月詠学園が、アンダーグラウンダーに襲われている。
鳥型と呼ばれる奴だ。
「鳥型は初めてだわ! いそがなきゃ!」
「おい、渡部! 全然休めてないぞ! 身体は大丈夫なのか⁉」
「大丈夫じゃなくても、私がやらなきゃ。学園を守らなきゃ!」
仕方がない。
「渡部、乗れ!」
俺は渡部の前に背中を向けてかがんだ。
おんぶされろってことだ。
渡部は一瞬とまどったが、直ぐに俺の背中におぶさった。