第3話
学園に向かうにつれ、破壊痕は薄れていく。
しかし、破壊されている事実は変わらない。
被害者も相当なもんだろう。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。B組の渡部真那よ。」
「おう、はじめまして。A組の入江黒斗だ。宜しくな」
「はじめまして・・・か」
「ん? 何か?」
「これでも、人気ある方なんだけどな」
「・・・?」
学園が見えてきた。
大丈夫だ。ちゃんと覚えてる。
今日の変な夢からこれまでのアヤフヤな記憶も、全て気のせいだ。
アンダーグラウンダーっといったバケモンが出現したことで混乱してただけだ。
落ちついてみれば、問題ない・・・はずだ。
「ねえ、たまに難しい顔してるけど、何かあったの?」
「いや、そんな顔してたか・・・。まあ、アンダーグラウンダーをあんな目前で遭遇したり、渡部の異能?・・っていうのか? あんな現実離れしたこと見せられたから混乱してるんだよ」
「そっ、そう。それは、確かにゴメンね。でもでもっ、入江君だって突然あんなとこにいるんだもん。助けるには異能を見られても仕方ないでしょ?」
「あぁ、そうだな。助けてくれてありがとう」
「はっ/// 別にいいよ。ほら、なんかの映画で大いなる力を持つものはナンチャラ〜って」
「そんなんあったっけ?」
「あったわよ! タイトル忘れたけど! それより、不思議なのよね。入江君と同学年で隣同士のクラスのはずなのに、学園で見たことないのよね」
「まあ、学年ごと10クラスもあるんだ、たまたまだろ。俺も渡部のこと知らなかったし」
「う〜ん。フ・ク・ザ・ツ」
「何が⁉」
学園に到着し、教室へ向かう。
渡部とはクラスが隣同士なのでお互いの教室に着くまで並んで歩いた。
学園自体、避難場所と指定されているらしく、校庭や体育館には一般人が多数集まっていた。
どこからか子供の泣き声が聞こえ、また違う方からは怒鳴りあう声も聞こえる。
皆、これからどうなるのか不安でしかたないのだろう。
流石に教室までは一般人の立ち入りは断っているみたいだ。
「じゃね、入江君」
「あぁ、またな」
それぞれの教室に入っていく。
「いーりえー、遅いから心配したぞ!」
教室に入るなり、俺に声をかけたのはクラスのお調子者で通ってる山本だ。
「おう、通学中色々あってな」
さすがにアンダーグラウンダーをぶっ倒していた(渡部がな)などと言えない。
「まだ、全員揃ってないみたいだな」
「ああ、アンダーグラウンダーが確認された附近に住んでる奴らもまだ着てない。最悪の自体にならないことをいのるぜ」
応えたのは、クラス1のスポーツマン。
サッカー部のエースで、女子からの人気ナンバーワンである大井だ。
「入江、それより大事な話がある」
深刻な顔をして大井が話す。これはタダごとではなさそうだ。
「どうしたんだ、なんかヤバいクラスメイトでもいるのか?」
「お前、B組の渡部さんと登校してきたろ」
「は?」
「おいおい、なんだってぇ〜! 渡部さんといったら学園1の美少女じゃん。俺やお前みたいな下々が語りかけるのも死罪に値するんだぜ!」
「なにを大袈裟な」
「いや、こういう自体だからこそ、本当に好まれているかどうかが試されているのではないかね? さあ、どうだ山本」
「その通りだ。くぅ〜、入江ごときに先に大人の階段のぼらせてたまるかよ!」
「言ってろよ」
正午近くになる。
先程表れたアンダーグラウンダー人型3体は何故か消えたという情報が入り、生徒達は安堵している。
まあ、何故消えたのかは俺と渡部しか知らないけどな。
今までも、アンダーグラウンダーが出現すると防災無線等ですぐに避難指示が出されていが、この付近では不思議と大した被害もなく消えていたということもあり・・・まあ、渡部がやっつけてたんだろうが・・・住民達には危機感があまりなかった。
しかし、今回のいきなりの3体出現には流石にヤバいと思い知らされたのだろう。
まるで爆撃された後のような、あの光景が思い出される。
まだ登校してない生徒がいる。
これは最悪な自体も受け入れるべきだな。
ピンポンパンポーン
校内放送の合図だ。
『緊急事態です。東南地区にアンダーグラウンダーが発生しました。学園方向に向かっているという情報です。あわてずに、教室に待機してください。今後の指示は校内放送で行います』
「なんだって、そんな悠長な! 東南地区って、すぐそこじゃないか! ここにいたら、やられてしまうぞ」
「でも、どこへ逃げればいいのよ!」
「た、たすけて神様」
「おい、みんな落ち着け!」
クラス内がざわめく。
どうする? 渡部は行くのか?
俺はこっそりと教室を出て行く。
「渡部」
「入江君⁉」
「やっぱ、行くのか」
「もちろん。私じゃなきゃできない事なんだから。神様がくれたこのチカラで」
「神様?」
俺達は建物を出て正門へ向かう。
アンダーグラウンダーが出現した方角を目指す。
「神様・・・なんて、何を非常識な事を言ってるんだと思ってるでしょ。でもね、わたしのこの異能自体非常識な事でしょ。でも、非常識であるけど、私はこの異能が人々の助けになると信じてる。だから、この異能を授けてくださった神様も信じてるの」
「えっ? つまり神様にあったのか?」
正門を出て東南地区へ向かう。
まだ遠いがアンダーグラウンダーの姿を確認した。
今度のは4足獣型だ。
「夢だった・・ようにも思えるの。ただ、あの出来事があってから異能が使えるようになったし。ぼんやりとしか覚えてないんだけどね」
「そんな不思議なことがあったのか。まあ実際異能が使えるんだ不思議なことがあっても可笑しくはないな」
渡部はフッと笑う。
「信じてくれてありがとう。それでね、その神様が言うにはね、近々私を助けてくれる勇者が現れるとおっしゃったの」
助ける? 勇者?
(異世界に行ってもらって、ある人物を助けてもらいます)
あの天使のネーチャンが言った言葉がまた頭の中に浮かんだ。
「なんていうかな〜。けっこう取っつきやすい神様で、キャリアウーマン?・・っぽくて」
キャリアウーマン・・・
「眼鏡かけてて」
眼鏡・・・
「天使みたいな翼を持ってるの」
ヤツかー⁉
まさか、ただの偶然だよな⁉
俺が今朝見てた夢に登場した天使のネーチャンと、渡部が会ったという神様の外見がたまたま似てただけだよな⁉
そもそも、天使と神様だよ。ぜんぜん違うっしょ。
「見方によれば、天使にも見えるかな」
完全一致だよ。
マジかよ。
やばい、また自分という存在がわからなくなってきそうだ。
「入江君、来るよ!」
気付けばアンダーグラウンダーにけっこう近づいていた。
(ある人物を助ける)
まさか、渡部の言う勇者って、俺のことか?