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異世界ゾンビは腹が減っている  作者: papaking
よくあるお仕事
3/12

銀の仮面をあつらえ、ジェイリーに渡したのはボーフォート公爵だった。

「そなたが悪いわけではないのだがな」

彼は仮面を付けたユーグを見て冷淡な口調で言った。

「奴めの顔は見とうない」

鷹揚でものにこだわらぬとされる公爵だが、今は歪んだ口元を隠そうともしていない。

その嫌悪の一部はもちろんユーグそのものにも向かっていることだろう。

動く死体リビングデッドと知ってあえて好む者などいない。

いるとすれば黒魔術の徒くらいのものであろう。

公爵は随分抑制が効く方である。

ユーグは特に何を言うでもなく、伯爵が公爵に対してするにふさわしい礼をするに留めた。


二人がいるのは公爵の執務室だ。

人払いがされているので外の廊下を歩く者の音さえない。

護衛はいる。

完璧に気配を消しているが、隣室との間に設けられた監視室に潜んでいるはずだ。

しかし、公爵を害する気のないユーグにとってはどうでもよいことである。

コツコツと公爵がペンの尻で机を叩く音だけが響く。

どちらも声を発せず、しばらく間が空く。

「……すまぬが、また仕事を頼みたい」

言いにくい仕事のようだ。

ユーグの仕事というのは全てが憚りある事柄に直結しているので、今更ではある。

そんなに言いにくければ手紙か、いっそジェイリーに言伝したところでユーグは全く気にならないが公爵にとっては違うのであろう。

苦々しい口調で続ける。

「殿下にお使いいただいておる屋敷に亡霊が現れるのだ」

この場合の殿下とはボーフォート公爵が後ろ盾となっている第三王子のことである。

名前は覚えていない。

「それを祓えばよろしいのですか」

簡単そうな仕事である。

別に呼び出さなくてもよさそうなものだ。

セルニアには幽霊屋敷が多い。

霊などが怖いならセルニアに来させなければよいのではないか。

そうした疑問はあるもののユーグは公爵には何も言わない。

あとでジェイリーに聞けばよいとしか思っていないからだ。

「言うまでもないが他言無用だ」

これもわからない。

王子が滞在する屋敷に亡霊が出る、ということ。それが何のスキャンダルになるだろう。

「場所などは追って知らせる。報酬も検討しておる」

はかばかしい返事をしないユーグに焦れたのか。

公爵は彼が最も聞きたいことを言った。

報酬を貰えれば何の問題も無い。

「承りました」

ユーグは音もなく退出した。



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