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序章

 

 最初に聞こえたのは怒号と爆音であった。



「竜王を殺せぇええええええええ!!」


「一匹たりとも逃がすんじゃないぞ!!」


 いくつもの人と思える叫び声が反響する。その言葉の中に宿る思いは殺意であり、暗闇の中に同化した彼の意識に違和感と恐怖として刻まれていく。


 いったい何ごとなのだ。視覚は機能しておらず、聴覚に届く情報は普段耳にしない事ばかり。それ以上の情報を求めようと瞳を開けようとするが、体の自由は一切利かない。

 だが、その不自由の中で温かみを彼は感じた。

 誰かに抱かれているような、そんな安心感を感じる温かみである。


「く、帝国の竜殺し共めこれ以上の侵攻は絶対に許さん!!ユリアよ我が子を連れてお前は遠くへ逃げろ!」


「竜王……、いえバハムート様この数を相手に無茶です!私とこの子アースラには貴方様が必要なのです!一緒に逃げましょう!」


「それはできない。ここで食い止めなくて我がドラゴン族は滅亡する。それだけは何としても食い止めなくてはいかん!わが命は一族のためにある!」


 その会話は彼にはよく分からない物である、だがその交わされる一言一言が心の奥へ熱となって刻まれていく。バハムートと言われるその声は逞しく気高い、ユリアと呼ばれるそれはどこまでも澄んだ尊い声で。


「ユリアよ……、アースラを頼んだぞ!」


 一瞬の沈黙を挟みながらバハムートは言葉を紡ぐ。

 ユリアは言葉が詰まったように、声を出さず、僅かに間をおいて。


「あなた……死なないで」


 そう口にした。

 

 それからバハムートの声が届くことはなかった。

 風を切り大地を蹴るような音がしたかと思うと、強烈な爆音が巻き起こる。

 何かが爆発した様な鮮烈な音は断続的に続き、彼の聴覚へ突き刺さっていく。


 何かが起こっている。

 夢とは思えない、心に響くこの音の正体も分からないまま彼の意識は再び暗闇へと沈んでいった。

 





 


 







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