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Eschatology  作者: 五百蔵翔
栗花落ミラージュライフ
5/12

バディと事件

「今日から貴方のバディを組むことになりました。よろしくお願いします」


抑揚のない声で彼女はいきなりそう言った。

背は160cm前後だろうか。俺が185cmぐらいだからか小さく見える。黒い艶のある綺麗な髪を肩あたりまで伸ばし、白い髪留めで両サイドの髪を留めている。


スタイルも抜群だ…………胸以外は。

あれだね、うん……まだ育ち盛りだから諦めないで!と言いたい大きさだ。


いや別に無いって訳じゃない。あるにはある、というレベル。


彼女を見ながらそんな失礼な事を思っていると彼女の目が光る。学校の制服であろう黒を基調としたセーラー服のスタートの中から拳銃を素早く抜き、俺の額に素早く当てる。


「貴方……今、失礼な事を考えましたよね?」


「え、あ、い、いやぁ」


自分の額に当てられている拳銃と彼女の地獄の底から響くような冷たく、怒りの含んだ声が怖い。しかし、1番怖いのはなぜか彼女は笑顔だということ。


「べ、別に何も考えてないですよ?ほ、本当なんですよ?」


両手を上げ、抵抗の意思が無い事を示しながら弁解する。冷や汗が止まらない。

だって彼女、終始笑顔なんですもん。可愛いけどさ!


「…………今回は見なかった事にします。次はないですよ」


「はいもう絶対金輪際」


次は殺す、そう言ったように聞こえたのは俺だけでは無いはずだ。彼女が拳銃をスカートの下のホルスターにしまったのを見てホッとしながら両手を降ろす。


「これから貴方の通う学校に案内します。着いてきて下さい」


「え? 管理課ってとこに行くんじゃないのか?」


「管理課は学校が終わり次第いきます。四十住課長が『君にはここに慣れるために学校に行って貰うよ』と言ってあると聞いていましたが……知らなかったんですか?」


首を傾げて不思議そうな表情をする彼女はとても可愛いらしい。やはり美少女のこういう仕草は良いね。ってそんなことは今はどうでもいいんだ。そんな事言われたっけ?あ、メールか?

寝室に戻って携帯を確認してみるとメールにはさっき彼女が言ったことが書いてあった。


あー、昨日は疲れてたからメールを確認しないですぐ寝ちゃったからな。

高校に通うのか。どんなとこなんだろ。

すぐ玄関に戻りる。


「ゴメン。メールでそう言ってたみたいなんだけど昨日は確認しなかったから気付いてなかったよ。それで高校の制服って何処にあるの?」


部屋にそれらしきものはなかった。あったのは押入れの中にパジャマや下着などだけ。

制服っぽいものは何処にもなかった。


すると彼女はドアの脇に置いてあった紙袋を渡してきた。


「これに貴方の通う私立峰ヶ崎高校の制服が入っていますから着替えてきて下さい」


「あぁ、わかった。ちょっと待っててくれ」


「はい、わかりました」


あ、いや外で待たせるのはダメだよな。


「悪い、中に入って待っててくれ」


「えっと、良いですか?」


「あぁ、別に私物とかはまだ無いから気にしないでくれ」


「あ、そういえば昨日寮に入ったんですよね?」


「そうなんだ。だから気にする必要もないさ」


「ではお言葉に甘えさせてもらいます」


さっき見せた笑顔とは違うまた違う笑顔を見せてくれた。あまりこういうのは経験がないからちょっと照れる。


「にゃあー」


彼女を連れてリビングに入るとササミを食べ終わったシャルが俺の身体を器用に登って定位置の頭に乗った。


「ゴメンなーシャル。今から着替えるから彼女と待っててくれ」


「にゃあ!」


わかった! と言ってシャルは彼女の頭に飛び乗った。あ!ちょ、シャル何やっての⁉


「お、おいシャル! いきなり頭に飛び乗ったらダメだろ?」


「にゃぁ……」


シュン、としたシャルを彼女の頭から退かせる。


「ご、ゴメンな? シャルがいきなり飛び乗ったりして」


「にゃぁ……」


頭を下げてゴメンなさい、と言っている。


「まぁ、シャルも悪気があってやった訳じゃないみたいだし許してやって貰えな……ってどうした?」


何故か彼女は顔を俯けてプルプル震えている。ヤバイ怒っちゃったのか?


「………か」


「か?」


「可愛いぃぃぃぃぃぃいい!!」


「にゃぁぁぁぁあ!」


「うおっ!」


バッと顔を上げたと思ったら満面の笑顔で俺の腕の中からシャルを奪い取り、頬ずりしている。


「はぁぁぁあ……! なんなんですかこの子! 毛並みも良くて可愛いくて最高ですよ!」


「に、にゃぁ…」


「そ、そうか。じゃあシャルと一緒に待ってて貰っていいか?」


「勿論ですよ! もう子お持ち帰りして良いですか⁉」


「うん、それはダメ」


彼女は猫好きだったのか。ソファに座り、シャルを愛でている彼女を尻目に寝室に戻り、紙袋を開ける。


「へぇ、学ランなのか」


紙袋を開けると中身は学ランだった。

素早く学ランに着替えてリビングに戻るとやけにツヤツヤした彼女と満身創痍のシャルがいた。


…………ごめんシャル。後でなるべく値段の高い猫缶買ってあげるから許しておくれ。


「あ、着替え終わったんですね?」


「あぁ、待たせて悪かったな」


「いえ、そんなに待ってないですよ」


そう言って彼女は笑顔を向けてくれた。

そういえばまだ彼女の名前を聞いてないな。


「あと自己紹介してなかったな。俺は龍胆 美桜。こっちはシャルロット。よろしくな」


「にゃあ!」


「あ、私は栗花落(つゆり)(みやび)です。こちらこそよろしくお願いします龍胆先輩」


「栗花落さんか。あ、俺のことは美桜でいいよ」


「なら、私も雅でいいですよ美桜先輩」


先輩って事は俺の年下か。俺が17歳だから雅は16歳かな?流石に中学生って事はないだろうな。いや、でもあのむーーーいや、これ以上の思考は俺の頭が綺麗な華を咲かせる事になりそうなのでやめておこう。

いや、別に雅の鋭い視線にビビった訳ではない。


「先輩は記憶喪失なんだと聞きました。分からない事があったら何でも聞いてください」


「え、あ、あぁ。ありがとな」


「いえ、相棒(バディ)として当然です」


四十住さんは雅には俺の事を記憶喪失という事にしたのか。他言無用と言っていたからそうしたのか。この雅の笑顔を見ていると良心が傷つく。ーーーあいつに似ているから尚更ーー。


「では美桜先輩。ここから学校な意外と近いので歩きで行きますが準備はもう良いんですか?」


「ッ! あ、あぁ…もう大丈夫だ」


「なら早く行きますよ」


少しビックリしたが雅がリビングを出て行ったので俺も後を追う。あ、シャルのお昼ご飯出しておくか。

戸棚からササミを出して皿に乗せてダイニングテーブルの上に置いておく。


「シャル、ここにお昼ご飯出しておくから12時頃になったら食べるんだぞ?」


「ーーにゃ!」


よし、これで大丈夫だな。

玄関に行き、靴を履き家を出て鍵を締める。


「さ、行きますよ」


雅の後に続きエレベーターに乗る。

改めて雅を見てみる。この子が俺のバディになるのか。という事は雅も異能所有者(クリムホルダー)なのか?

そこのとこを聞いてみたいが異能(クリム)はその人の過去などが関係していると朝のニュースで聞いた。


雅が異能所有者(クリムホルダー)ならあまり異能(クリム)については聞かれたくないだろうな。雅が自分から言うまで聞かないでおこう。


雅の後については行き、駅の周辺に出た。

これからは1人で行かなきゃならなくなりそうなので必死に道のりを覚える。えーと、あそこに郵便局があって、その先にコンビニで向かい側がパン屋で………ん?


「? どうしたんですか美桜先輩」


俺が立ち止まったのに気付いて声を雅が声をかけてくるが今は無視。

何か……走ってくる………。

ーーッ!!


ドスンッと身体に衝撃が走る。


衝撃の発生源の足元を見てみると5.6歳の男の子が涙に濡れてグシャグシャになっている顔をこっちに向けていた。


「え? この子何処からーーー」


「お、お兄ちゃん!!た、助けて!!!」


男の子は必死の形相で俺に向かって大声で助けを叫んだ。


「どうした!? 何があった!?」


「お、お母さんが……!! お母さんが!!」


「待て! 落ち着け。落ち着いて話すんだ」


男の子からの発言からこの子の母親が何かあったのは分かる。が、この子は多分、混乱していてまともに話をできる状態じゃない。

俺は男の子の目線までしゃがみ込みしっかりと目を見る。こっちが慌てていたらこの子も余計混乱してしまう。


「君のお母さんがどうしたんだ?」


「お母さんが……ご、強盗の人質に…!」


「それは何処でた?」


「あ、あそこの銀行だよ! お願い! お母さんを助けて!」


「わかった。絶対に助けてやる!君はここで待ってろ」


男の子を安全な所に移動させた後、雅と合流する。不思議と恐怖などが感じられない。逆に冷静に判断ができる。


「美桜先輩! 強盗はあの銀行に人質を取っているみたいです。警察には連絡しましたが恐らく待ち合わないでしょう。私達で鎮圧します」


「わかった。だがいいのか? 警察が到着するのを待たなくて」


「警察が到着する頃には多分逃走しているでしょうから。それに私達も一応警察なんですよ?」


「そういやそうだっな」


「まず、私が正面から入り犯人を牽制します。美桜先輩は裏口から入って犯人を背後から確保してください」


「わかった。が、雅は大丈夫なのか? 俺が牽制にまわったほうがいい気がするんだが…」


「大丈夫です。私の腕を甘く見ないで下さいよ?」


そういやついさっき体験したばっかりだったな。よし、やるか!


「では美桜先輩は先に裏口に行って下さい。裏口に入ったのを見てから私が突入して牽制しますから隙を見て確保して下さい」


「わかった。じゃ、行ってくる」


銀行の裏口に周り、入ろうとするが鍵が掛かっている。俺は人外的な身体能力で鍵をぶち壊す。あの翼は生えてない。あの翼は身体能力の3割程度までなら解放しても生えてこない。だがそれ以上解放すると生えてしまうけど。


裏口に入ると銀行員が気付いたみたいだが口に人指す指を当てて静かにしてくれ、という意図を伝える。


銀行員はその意図に気付いたようでコクリと頷いた。強盗犯は全身黒で統一していて覆面までしている。覆面をしているので顔は分からない。ナイフで銀行員の1人を脅している。


「動かないで下さい!!」


「ッ⁉」


どうやら雅が突入したみたいだ。強盗犯は突然の事に戸惑っているみたいだ。今がチャンスだな。

急いで強盗犯の背後に周り込みタイミングを窺っていると強盗犯の両腕から黒い刃が服を突き破って幾つも生えてきた。雅の表情に驚愕が浮かぶ。


「オラァ!!」


くそっ!あいつ異能所有者(クリムホルダー)か!気付いた時にはもう遅く、強盗犯は驚いて固まったいる雅に向けて両腕を振るった。


何十本もの黒い刃が雅に向かって飛んで行く。俺は瞬時に全力で床を蹴る。

バンッ! と凄い音を立てて床が沈没する。雅に向かって飛んで行く黒い刃を止めようとするがーーー。


(くそっ!!間に合わない!!)


このままでは間に合わない! と思って気付いた。俺の背にあの翼が生えていた。

そうか!全力出したから生えてきたのか!

3メートル近くある真っ白な翼を雅と黒い刃との間に滑り込ませる。


キキキキキンッ!


金属と金属がぶつかったような音を出して翼が黒い刃を弾く。え? 俺のこの翼ってこんなに硬かったけ?

そんなに硬いならと思い翼を強盗犯の横っ腹に叩き込み吹き飛ばす。


「グフォッ!?」


ドカンッと音を立てて壁に激突して強盗犯は伸びた。強盗犯が気絶したと分かったのか銀行内の人々が泣いて喜びを分かち合っていた。


「………………美桜先輩も…………異能所有者(クリムホルダー)……だったんですか…………」


そんな中、雅の悲しそうな声が聞こえたような気がした。




今回は2人の異能所有者(クリムホルダー)が出てきました。この2人の能力は読者様からのアイディアです。

このようにドンドン出していきたいと思うので皆さんの素晴らしい意見やアイディアをお待ちしています。

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