病室2
「ーーーアカ、リ?」
それは言葉通りに思わず口から漏れてしまった言葉だった。
「?」
当の少女は少年の言った言葉をよく理解していない様子である。
おそらく、聞こえていなかったのだろう。
「ーーーあ、あれ? 俺、今なんて……」
しかし、少年自身も自分がなにを言ったのかをほとんど覚えていない様子のようだった。
「だ、大丈夫ですか? も、もしかして…何処か痛いんですか!?」
「あっ、いやなんでもないんだ…。ただ、ちょっと考え事をしていただけなんだ」
「そ、そうですか。なら良かったです」
えへへ、と微笑む彼女を彼はまだ、混乱しているように見つめている。
「………」
「………」
会話がなくなってしまって、気まずい空気が流れる。少女はそれをなんとかしようと必死に話題をつくる。
「そ、それにしても驚きましたよっ」
「驚い、た?」
「えぇ。なにしろ、空から人が落ちてきたんですから」
「空、から…?」
「はい、空から」
心底驚いたような表情で返す少年に少女はひどく真面目にこたえる。
「誰が………?」
「えっと、貴方がですけど……」
「俺が……?」
自分に起こっている状況をまったく理解出来ていない様子の少年に少女は不安気にこたえる。
だか、少年はそのことに気を回している余裕はないといった感じだ。なにしろ、空から落ちた記憶などまったくないからである。
「……大丈夫ですか? えっと、…此処が何処かーーー」
心配気に話してくる少女の言葉は、再び開いた病室のドアの音によって掻き消される。
病室に入ってきたのは三十代前後と見られる中性的な顔立ちをした男性だった。
男性は人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべている。
「おや、目が覚めたようだね。いきなりで悪いが少し君に聞きたいことがある」
男性は柔和な笑みを少しだけ崩し、眼光をほんの少し鋭くしてそう言った。
ネタが無い……orz