病室
ここは、何処だ…………?
あれから、俺は、死んだ、のか?
………何も見えない………
死んでいるのかも、分からない………
でも、あの時、確かに誰かの声が………、
「ーーーッ」
それまで、死んだように静かに寝ていた少年は、バッと被っていた物を跳ね除け、周りを見渡す。
「………」
しかし、周りを見ても誰かがいる様子はない。
「……でも、さっき確かに声が……。ーーってここは……?」
落ち着いてみて気づいたが、ココは何処なのだろうか。自分はベッドの上に寝ていたようだ。それに、周りは白い壁があるだけ。
いや、よく見ると小さな戸棚の上に花瓶が置いてある。客観的に判断して、ココは病院なのだろう。
しかし、自分は病院に居た覚えはまったくない。だが、ココにいると言うことはおそらくあの時、助けられた……ということになる。
「俺は……生きて、いたのか…」
それを実感すると、生きてことの嬉しさに体が震えてくる。
(あの時…絶対に死んだと思ったけど、生きていたのか……良かった………)
が、そんな思考もガラッと開いたこの病室の扉の音で終わりをつげる。
扉から入ってきたのは高校生と見られる制服を着た少女であった。少女の手の中には、木のバスケットがある。その、バスケットの中には色とりどりの果物が入っている。
少女の視線が少年の方に向くと、少女は少し、不安気だった表情を微笑みに変える。
「よかった………。意識が戻ったんですね」
心からそう思っているのだろう。その言葉に嘘はなく、本心から安堵しているのが窺える。
少女は微笑みを浮かべながら少年のベッドに近づき、備え付きのイスを出してベッドの横に腰掛ける。
「私が助けた時は、まるで死んじゃったように何も反応しなくて………凄く心配したんです」
だから、目が覚めて本当に良かったですと困ったような微笑みを浮かべながら言葉を続ける少女を、少年は呆然と見つめるだけ。
すると、そのことに気づいた少女は慌てて両手をふる。
「あっ、ち、違うんですよっ!? その、今のは言葉の綾というものでっ!」
しまった、という顔で弁解をする少女。おそらく、先ほど言った事が原因で少年の気分を害してしまったと考えたようだ。
だが、少年には先ほどから少女の言葉はまったく耳に入ってこない。
そして、少女が自分の言葉になんの反応も示さない少年に疑問を浮かべた時、少年は呆然とした表情のままふと、言葉を発した。
「ーーーアカ、リ?」