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第三章 変容 二


×××


「ヴヴゥゥゥヴゥゥアアアアアァァァアアアァァァ――――」

 雄也とハワードが気絶させ、結界の中に閉じ込めていたクティーラが、突然叫び声を上げた。

 今までに聞いたことがないような、聞くだけで魂引き裂かれるような、そんな声だった。

 異変を察知した雄也とハワードは即座にクティーラのところへ向かった。

 直後、クティーラの全身から禍々しくも神々しい光が放たれた。遥か空の彼方まで伸びていくそれは、光の柱とでも言うべきだろうか。

 光の柱に包まれたクティーラが、ゆらりと立ち上がった。

 まるで、操り人形のように。

 クティーラの動きを封じるための結界は、光の柱のよって破られ機能を失っていた。

 雄也も、ハワードも、ただ、目の前で繰り広げられる現象を見つめていた。

 クティーラを包んでいた光の柱がゆっくりと消えて行った。同時にクティーラを中心とした竜巻のように、周囲の霊気がクティーラへと向けて収束し始めた。

 クティーラの背中から自身の体の何階もの大きさの光の羽が出現する。

 直後、クティーラは宙へと浮き十メートルほどの高さの場所で停止した。

「グヴゥウゥアァァアアアアァアアアアアアァァァァァァァァ――――――――ッ!」

 再びクティーラが雄叫びを上げる。

 空間そのものが揺らいでいるかのような咆哮だった。

「……一体、何が」

 雄也は発生した霊気の渦に飲み込まれまいと必死に踏ん張りながら、クティーラの姿を見据えた。

 突如、クティーラの全身が泡立ちその原型が崩れ始めた。そして、その泡の中から無数の触手のようなものが伸び始める。完全に物理法則など無視しながら、原形の崩れたクティーラの全身から何本もの触手が沸き、絡み合い、混ざり合い、溶け合い、やがて一つの形へと変化していった。

 

 ×××

 

「ハッハッハッハッハ、素晴らしい、実に素晴らしい! あのクティーラですらこれだけの力を持っていたとは。いやはやなんとも嬉しい誤算だ。しかもこれでまだ一割にも満たない状態。何とも愉快なことだ。今頃全世界に日本での霊気異常が報告され大混乱を招いている頃だろう。クックッククククッハハハハハハハハハハ、笑いが止まらんなあ、アッハッハッハハハハハハハハハハハハ」

 公園の近くの高層マンションの屋上。そこに立ち公園の様子を見ていたニャルラトホテプは、思わず歓喜の声を上げた。

 夕日が銀の髪を赤く染め、伸びる影法師が悪魔のように揺らめく。

「さあ、ここからが楽しいショーの始まりだ。君たち人間の『覚悟』というものが、果たしてどれほどの力を持つか、クックックックック、せいぜい私を楽しませてくれよハッハッハッハッハハハハハアッハッハッハッハハハハハハハハハハハハ」


×××


 そこに現れたものの姿はとても醜悪で、そして戦慄を禁じ得ないような形状だった。

 全長は十メートルほど。

 人間の下半身に当たる部分は、絡まりながらのた打ち回る太い触手によって形成されており、その触手の内の何本かは、地面へとまるで木の根のように突き刺さっていた。

 鱗にまみれた巨大な腕からは巨大な鉤爪が生えている。

 肥大化した頭部からは、髪の毛のように生えたいくつもの細い緑色の触手が、それぞれ固有の意思を持っているかの様に蠢いている。

 背中からは、光の羽が消え蝙蝠に似た巨大な翼が生えている。

 そして、その顔に並ぶ無数の瞳は、そのどれもが獰猛な赤い光を宿していた。

「……クティーラ、……なのか?」

 雄也は、絞り出すようにして何とか言葉を紡いだ。

「――――――――――ッ!」

 雄也の前に現れた化け物は、口を開き、咆哮を上げた。

 雄也はこの化け物のことを『知って』いた。

 雄也の悪夢の中に幾度となく現れた醜悪なる異形、『ポセイドンの書』にクティーラの姿として記されていた『邪神』、それらの持つ特徴とこの化け物は完全に一致していた。

 今の雄也には、目に前にいる狂気じみた『邪神』と、緑の髪を揺らしながら無邪気に笑う『クー』が、同一のものであるということに確固たる自信があった。

 揺るぎ無い証拠があった。

 崩れること無き真実があった。

 だからこそ信じたくなかった。

 クティーラが確かなる殺気を持って、その腕を振り下ろしてくるというこの現実を。

「っ! 危ないっ!」

 間一髪、ハワードが、半ば放心状態の雄也を抱きかかえ、クティーラの攻撃射程の外へと後退する。

 その直後、今さっきまで雄也のいた場所に腕が叩きつけられ、轟音と共に大地が砕かれた。

「くっ、このままでは、周辺に――」

 ハワードはポケットから再びアイスの棒を取り出すと、公園の四隅へと向かって投げた。そして、それぞれのアイスの棒は地面に刺さると、そこを起点とし、公園全体を覆う巨大な結界を出現させた。

(当分の間はこれで周囲への被害も、この状態が発覚することもないはずだ。私の力と、現在のクティーラの状態から考えて、結界が耐えられるのは一時間が限度。それ以内に何とか対策を立てなければ。そして、そのためには――)

 そこまで考えると、ハワードは雄也へと話しかけた。

「雄也君、大丈夫かね」

「……はい、何とか。でも、あいつが、……あの化け物が、クティーラ……」

「気をしっかり持ちたまえ! そんなことでは――」

 ハワードがそこまで言ったところで、クティーラが再び攻撃を行った。胴体を構成していた触手の内の何本かが、一斉に雄也とハワードの元へと襲い掛かる。

 雄也はそれを察知して、即座に回避行動をとる。ハワードも雄也が動いたことにより攻撃が来ることを理解すると雄也とは反対の方へと移動し触手を回避する。

 直後、無数の触手の束が鞭のように叩きつけられ地面を抉った。

「――――――ッ!」

 クティーラの咆哮が響き渡り、叩きつけられた触手が、雄也とハワードの二人を追って二方向に伸ばされる。

 雄也は『知識』を駆使して攻撃位置を先読みし、ハワードは自身の経験とそれによって鍛えられた技術によって、それぞれ攻撃を回避する。

「ハワードさん!」

「なんだね!」

 お互いに触手による攻撃を回避しながら会話をする。

「クティーラを、止める方法は?」

「私もそれを君に聞こうと思っていたところだ。何かわからないかね?」

「わかりませんよ!っく、このっ!」

 雄也の腕が触手に絡みついた。

 いくら攻撃を正確に先読みできるとしても、いくら身体能力を強化しているといっても、全ての攻撃を避けきれるわけではない。

 そもそも、雄也は呪印による身体強化を抜きにすれば、身体能力自体はただの高校生でしかない。今まで戦ってきた超越的存在というのも、そのほとんどが自分よりも力の劣るもの達ばかりだった。

 ましてや今のクティーラのような自分よりもはるかに強い敵というものは、出会ったことすらもなかったのだ。

 何とか触手を振りほどこうもがく雄也に、ハワードの声が響いた。

「動くな、雄也君!」

 その直後、幾筋もの黄金の光線が雄也を捉えていた触手を切断した。

「――――――ッ!」

 クティーラの口から悲鳴にも似た叫び声が響き、それと同時に、全ての触手を一度引っ込めた。

「大丈夫だったかい、雄也君」

「すみません、助かりました」

「それで、さっきの話の続きなのだが、君は今のクティーラをどうにかする方法を知っているか?」

「……いえ、『ポセイドンの書』の知識の中にはありません。……ただ、一つだけわかることがあります」

「なんだね、それは」

 雄也は、数メートル先にそびえ立つクティーラの姿を見据えながら答えた。

「今のクティーラは、完全体ではありません。多分、まだどこかに理性が残っていて、完全に『邪神』には成っていない、と思います」

 雄也の言葉に、対して、ハワードはクティーラの姿を見据えたまま、ゆっくりと質問した。

「今君が言った言葉は、全て、本当のことかね?」

「……前半は真実。まだ理性が残っているというのは、俺の、個人的な希望的観測です」

「……わかった。ありがとう」

「――――――ッ!」

 再びクティーラが叫び声を上げた。

 そして、その大きく開かれた口へと、周辺の霊力が収束していく。

 雄也とハワードが再び戦闘態勢をとった。

 直後、轟音と共に、クティーラの口から膨大な霊気による光線が放たれた。

 直径一メートルほどのレーザー兵器、あるいは特撮映画の怪獣が放つ光線とでもいうべきだろうか。

 禍々しい光を伴って放たれたそれは、攻撃を察知して回避行動をとった雄也とハワードの真上を通過し、ハワードの作り出した結界に直撃した。

「くっ、これほどの――」

 ハワードが呻く。

 ハワードが公園を囲むようにして創り出した結界は、地脈、すなわち地球そのものの霊気を用いて作られており、その強度は例え『邪神』であったとしてもそうやすやすと破れるものでは無い。しかし、結界がダメージを受ければ、それを制御しているハワードもそれ相応のダメージを受けることになる。

 クティーラは、攻撃を避けられたことに気が付き、攻撃目標を雄也に変更すると、そのまま光線を雄也に向けて薙ぎ払った。

「さすがにこの威力は――――、でも、当たらなければ!」

 叫び、己を鼓舞しながら、呪印の力を使って身体能力を最大限に高め、光線から逃げる。

 数秒の照射が終わった時、公園には光線によって抉られた溝が生まれていた。

「これで、――っ! って、嘘だろ、おい!」

 クティーラは、光線の照射後、再び無数の触手を発生させ雄也へと攻撃を行った。

 ただし、触手を伸ばすだけではない。触手の先端から、霊力による光線が放たれたのだ。

無数の触手による打撃と捕縛、そして光線による射撃が、四方八方から雄也へと襲いかかる。

 雄也は、『ポセイドンの書』の『知識』による予測と、呪印による身体強化を併用し攻撃を避ける。幾度となく光線が掠め、そのたびに焼けるような痛みが雄也を襲う。

「っ、だが、この程度でっ!」

 何度も攻撃を回避し、そして避けきれない攻撃を防御する。

「ぐおぁっ!」

 触手を鞭のように使った打撃は例え防御しても、その箇所の骨や筋肉が砕かれるような痛みを受ける。

 光線に対して即座に霊力の『盾』を張ったとしても、一秒として持ちこたえることなく破られてしまう。

 ダメージで僅かによろめいた瞬間、雄也を捕縛しようと触手が伸ばされた。雄也の『知識』はその触手がたどる道筋を寸分の狂いなく予測するが、体の反応が追い付かない。

「しまっ――」

 斬撃。

 雄也を捕縛しようとしていた触手が切り裂かれた。

 動いたのはハワードだった

 仕込み刀を抜いたハワードが、素早い身のこなしで次々と、クティーラの触手を切断する。そして、そのまま一気にクティーラとの間合いを詰めた。

「――――――ッ!」

 クティーラは叫び声を上げながら腕を振り上げる。

 ハワードはそれに臆することなく、仕込み刀を下段に構え、触手の攻撃を避けながらさらに間合いを詰めていく。

「――――ッ!」

 クティーラが腕を振り下ろした。

 ハワードが足を止め、仕込み刀を切り上げる。

 鱗に覆われた腕が、鋭い鉤爪が、ハワードへと向けて振り下ろされる。

 衝突。

「ハワードさんっ!」

 雄也が叫ぶ。

 直後、振り下ろされたクティーラの右腕が切り落とされた。

 即座にハワードは一歩後退。少し遅れて、クティーラの腕から緑色の体液が噴出する。

「――――ッ!」

 クティーラが悲鳴のような声を上げながら、ハワードへと向けて触手を伸ばし反撃した。その一本一本があたかも意識を持っているかのように、四方八方からハワードへと襲いかかる。

 ハワードはその攻撃を避けながらさらに後退。クティーラへと刀を向け、その先に魔方陣を発生させる。そして、その魔方陣から無数の光線を放った。

「これならば!」

 光線がクティーラの全身に次々と命中する。

 一度に大量の夜鬼を斃し、二度にわたりクティーラを一時的に戦闘不能にしたハワードの得意技だ。

「――ッ――――ッ」

 クティーラが呻き声を上げ、切り落とされた腕を庇いながらうずくまる。

 反撃が来ないその隙をついて、ハワードは雄也の近くへと後退した。

「雄也君、さっき心配してくれてありがとう。しかし、それには及ばない。私も、伊達に『邪神』専門の退魔師などと名乗っているわけではないのだよ」

 雄也にそう告げたハワードは、クティーラの方へと向き直った。

「ただ、思った以上にてこずらされた。どうやら君の言うとおり不完全体のようだな。完全体になっていれば危ないところだった」

 雄也はハワードの言葉を聞きながら、地に伏したクティーラの巨体を見ていた。

(すまない、クティーラ。今はこうするしかないんだ。だから、早く正気に戻ってくれよ。……それにしても、不完全体とは言え、『邪神』に対してこれほど一方的にダメージを与えるなんて、とんでもない戦闘能力じゃねーか! しかも結界の制御をしながらだろ、いったい何者なんだよ。今の攻撃だって、殺す気でやっていれば…………ん?)

 そして浮かんだある疑問をハワードへとぶつけた。

「ハワードさん、もし仮に、今ここでクティーラが死んだ場合、俺はどうなるんです?」

「命を共有している以上、君も死ぬことになる。……ああ、なるほど、私がクティーラを殺すのではないか、という心配か。しかしそれは杞憂というものだ。例え私にどれほどの力があろうとも、私には彼女を殺すことは出来ない。出来たところでせいぜい戦闘能力を奪ったり封印したりする程度だ。『邪神』の生命力とはそういうものなのだよ。それは雄也君も知っているだろ?」

「ええ、そのことはわかってます。でも、それはつまり、『逆』も可能なわけですよね。もしこのままクティーラの暴走が止まらなければ――」

 雄也は言葉を言い終わる前に、会話を中断しなければならなくなった。

 クティーラが、ゆっくりと起き上がったのだ。

「――――、――――――ッ!」

 咆哮と共に、周囲の霊気がクティーラへと吸収されていく。そして、切り落とされた腕の断面がグロテスクに泡立ったかと思うと無数の触手がそこから生え、絡み合い、融合し、腕が再生した。

 腕だけではない。

 切断された触手、攻撃によって損傷した皮膚、その総てが見る見るうちに修復されていく。

「……やはり再生するか」

 ハワードはそう呟くとクティーラへと向けた刀の先から魔方陣を展開し、無数の光線による攻撃をおこなった。

 再生途中のクティーラへと攻撃が容赦なく降り注ぐ。光線が皮膚を焼き、体を貫く。再生しかけたカ所へと再び攻撃を当てその再生を阻害する。

 しかし、クティーラはそれを意にも介さなかった。

 再生速度がさらに上昇し、ダメージを上回る勢いで全身が修復されていく。

 まるで、今まで本気を出していなかったとでも言うかのように。

「凄まじい再生速度だな。……ならばっ!」

 ハワードが刀を構えてクティーラへと間合いを詰める。クティーラは先ほどのような触手による迎撃を行わず、左手をハワードの方へと向けた。

 ハワードは刀を振りかぶり霊力を込める。それに反応し、刀身が黄金の光を放ち始めた。

 霊力による光線よりも、刀に霊力を込めて切り付ける攻撃の方が、威力は圧倒的に高い。霊力の減衰がほとんど起こらず、刀そのものの斬撃が威力として加算されるためだ。それはすなわち、接近というリスクと引き換えに、一撃必殺の攻撃能力を得ることを意味するのだ。

 ハワードの剣が振り下ろされる。

 ハワードの黄金の光を放つ霊力は、それに触れたあらゆる超越的存在に致命傷を与える。

 それは『邪神』が相手であっても例外ではない。過去幾度にもわたるハワードの経験から、あるいは、二度にわたりクティーラをダウンさせたことからそのことはすでに証明されている。

(例え強力な再生能力を持っていたとしても、それを上回る威力と速度でダメージを与えればいい。ただ、それだけのことだっ!)

 一撃必殺の斬撃が、まずはクティーラの突き出された左手を狙って放たれる。

 衝撃。

 ハワードの刀が、何かに阻まれ止まった。

 最強の一撃はクティーラへと届かなかった。

 斬撃を受け止めたものは、クティーラの左手の先に出現した霊力の障壁だった。空間が歪んでいるかと錯覚するほどに膨大な量の霊力によって作られた盾が、幾度となく超越的存在を屠ってきたハワードの刀を無力化したのだ。

「バカな! こんなことが……」

 相性の問題などでは無い。

 魔術の属性など関係ない。

 純粋に膨大な霊力による力比べで、クティーラはハワードの攻撃を無効化したのだ。

「ハワードさん、後退を!」

 雄也の声に反応し、ハワードは地面を蹴って即座に後退する。直後、クティーラの触手がハワードのいた場所へと叩きつけられた。

 地面が抉られ、土が飛び散る。

 もし判断を誤り後退せずにいたならば、今頃ハワードは無事ではなかっただろう。

 クティーラが、再び無数の触手を雄也とハワードの方へと伸ばした。

 ハワードは即座に刀で触手を切断する。

 再生すると判っていとも時間稼ぎにはなる。そう判断してのことだ。

「俺だって、こんなところで」

 雄也も触手を回避しようと動く。

 クティーラの動きを先読みし行動するが、しかしそれも、すぐに限界を迎えた。足をとられて転び、さらに両腕へと巻きつかれたことで自由を奪われる。

「く……、まずい、これは……」

 クティーラの胴体部分が変形し、まるで口のように縦に割けた。そして、そこから伸びた触手が雄也の体へと巻きつく。

 粘性を持った体液を帯びた緑色の触手が、雄也の自由を奪うように全身へと絡みつく。

「チクショウ、この、離せ!」

 雄也は何とか触手を振りほどこうともがくが、抜け出せそうな様子はない。

 ほとんど為す術もなく、ずるずると触手に引きずられ、徐々にクティーラの『口』が近づいてくる。

(――喰われる!)

 そう思うと同時に理解した。

 これからクティーラがしようとしていることを。

 今ここで雄也が死ねば、魂を共有しているクティーラもただでは済まない。そのことをクティーラが理解しているのだとしたら、クティーラが雄也を『喰う』ことによって何をしようとしているのか、おおよその推論が建てられる。

 ハワードは雄也を助けるために駆け寄ろうとしが、無数の触手が阻まれる。

 足を止め、触手を切り裂き突破した時ハワードが見たものは、クティーラの中へと取り込まれている雄也の姿だった。

 ハワードは言葉を失い立ち尽くす。

 雄也の姿が消え、クティーラの『口』が閉じられた。

 あまりにもあっけなかった。

 無数の赤い瞳が嗜虐的な光を放つ。

 瞬く間に雄也は『口』からクティーラの体内へと『飲み込まれて』しまった。

 

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