1 主人公の紹介
この物語の主人公を紹介しておこう。
三吉友美は乙佐香市立鳩目図書館の司書。
身長157cm、体重…?kg。小顔でクリッとした 瞳……切れ長のアーモンド眼が印象的な、20代半ばのスレンダー美人。頤にある黒子もチャームポイントの一つ。
館内向けに注意事項などのアナウンスをするときがあるが、鈴を転がしたような、まるで天使の声。
もっとも天使を見たことがないので確かではないが…。
上気して頬を染めているときも、眦あげて怒っている時でも美しいと思うし、真剣に検索などしているときの顔はキリッとした神々しさを感じる。そして、笑顔は…じつに…可愛い!のだ。
貸し出しのとき、つぶらな瞳でじっと見つめられ「お待たせしました。○月○日迄です」と言われたら、天にも昇る気持ちになる。
髪は、前髪だけを見るとタマネギおばさんこと黒柳徹子風のオカッパだが、髪は長くいつも後ろで纏め上げており、うなじのほつれ髪にそこはかとない色気がある。
趣味は読書と音楽鑑賞。
本を読むのは、仕事柄話題の新刊書は外せないし、あらゆるジャンルの本を多岐に亘って網羅する。
従って自然と雑学博士になっている。
もう1人は、「大器晩成だから…今は…売れてないのだ」と変に豪語?する、自称作家兼フリーライター大瓦啓介、年齢不詳。本当は何を生業としているのか分からない。
お腹の出具合から、かなりのおっさんと思われる。
性格は、何でも首を突っ込むが直ぐ首を引っ込める亀のような癖がある。
かと思えば気に入ると離さないスッポンのようなところもある。
フリーライターと言っているが依頼原稿などはめったに無い。あれば時間的に余裕がない穴埋め用か、ギャラが低くて誰も引き受け手がないものばかり。
大瓦という珍しい名前もあるが、名は体を現すといい、その風貌からついてあだ名が「鬼瓦」。
仲間内からは単に「オニ」と呼ばれたりしている。
初めて鳩目図書館に行って、カウンター窓口にいた三吉友美を見たとき、思わず「き、綺麗だ!」とつぶやいてしまった。
「お前は林家三平か!」と突っ込まれそうだが、林家三平が、水戸黄門の撮影で国分佐智子を見た時に思わず「き、綺麗だ」つぶやいたそうだが、きっとそれ以上の衝撃だったかもしれない。
「沈魚落雁」や「解語の華」、「姫美神」というのは、友美のための言葉だと思った啓介であった。
ある時、例によって締め切り日が短い依頼で、鳩目図書館で色々調べるのに友美に協力してもらって以来、暇な時は用事もないのに顔を見に行くようになった
。
友美の通常業務、即ち本を借りたり返したり調べてもらったりという、窓口業務以外では一切声を掛けたりする訳でもなく、ただ顔を見たらそれで納得して、ルンルン気分で意気揚々と帰ってくる。
会えなかった時には青菜に塩状態でガックリ肩を落し、まるでこの世の終わりのような顔で帰ってくるという、実に分かりやすい男である。
それではストーカーではないかとの指摘には、本人は大ファンであって、断じてストーカーではないと言い張っている。
そんな中、ある事件を彼女の推理で見事に解決してからというもの、今では三吉友美ファンクラブ会長を自認している。
もちろん友美本人は、そんなファンクラブがあることすらまったく知らない。
もっとも、他のファンを一切入会させず会長ひとりだけのクラブ。
「ファンクラブというものは幾つあってもいいのだ」とうそぶいている。
チンチン電車の鳩目線沿いに小さな事務所を構えているが、いつも不在。電話は転送。