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三吉友美の事件簿 Fの悲劇  作者: 大瓦 啓介
10/12

9 考察

「…と、いうわけだ。春本が殺された夜は誰もが部屋で寝ていたと言う。誰か一人は嘘をついているのだが…そいつが犯人だ」

友美は、1時間だけという約束で、ファミレスでチョコパフェを食べながら、啓介の話を聞くことにした。


「発見されたときは、ドアに鍵が掛かっていた…。小さな窓や換気は出来るが、人間が出入り出来るのはこのドアだけだ。即ち密室殺人事件だ」


「ということは、小さな窓とか通風口等はあったということでしょうか?」


「テーブルに針と黒い糸の切れ端が、ドアにガムテープが一部分だけ貼られ、赤い糸が絡み付いたまま回っていた換気扇、開かない換気窓に白い糸くずのようなものが残されていた。またドアの上の内側にガムテープの跡があった。ドアには覗き窓のようなものもあり、枠を外せば何とかできそうな気がする。何らかの方法で鍵を掛けたのだろう」


「犯行現場は新館の先生の書斎ですか?」


「そうだ。やはり機械的トリックだとおもう」


「あのぅ…」


「どんな密室だって、解けない謎はないはずだ…よね」

啓介は自分が解くわけではない。解くのは友美だから、直ぐに同意を求める。


「あのぅ…書斎のドアの鍵ってどんなのか分ってます?」


「ん!?えーっと!普通のドアノブとしか聞いてない」


「書斎のドアは、ノブの中にボタンがあって、それをボチッと押してドア閉めると鍵が掛かるドアノブ、つまり、シリンドリカルロックだったと思いますけど。だから犯人は部屋を出る時ボタンを押してからドアを閉めただけだと…」


「ん!なぜ知ってるの?…エーッ!そ、それじゃトリックを使った密室じゃないってことォ!?」


「私の記憶違いでなければ」


「…。てっきり密室殺人だと…さすが売れっ子推理作家だと思っていたのだが…人ひとり死んだのに不謹慎かもしれないが、じつに面白くない」


「面白いとか、そういう問題じゃないでしょう。でも寄贈の件、どうなるでしょうね」


啓介にはコーヒーが、友美の前にはチョコパフェが置かれた。

美味しいもの大好き人間の友美としては、にんまりするしかない。


啓介の話が続く。

「この5人と横山との接点が焦点だが、誰も直接の繋りがないそうだ」


「横山があの爺さんを殺したかどうかは分からない。おそらくそうだろうと推測するだけ。確実なことは、奪われた本を横山が持っていたこと。しかもかなりのページに指紋が検出されたらしいことから、横山が殺されたあとで持たされたものではなく、本を丹念に調べたのは横山本人だといえる」


「あの殺された爺さん。どうやら、覚せい剤の末端組織の手先に使われていたようだ。警察はノーマークだったようだが…。」


「密輸グループと売人グループがある。しかし接点がない。末端の売人は携帯やメールで頻繁にやり取りしているからいつでも押さえられる。密輸グループからブツが売人グループにいつ何処で渡すという連絡が入るはずだが、そのルート・手段がわからんそうだ」


友美はもくもくとパフェと格闘しながらも、啓介の話はしっかり聞いている。

「つまり、元を断たなきゃ駄目ということですね」


「うん、売人グループのリーダーがいつの間にか連絡を受け取っている。気が付いた時には、既にブツは取引されたあとだ。」

美味しそうに食べる友美に、啓介は見とれてしまった。


「それで…どうしたんですか?」

「あっ ごめん。売人リーダーの周辺の人間で、あの爺さんが殺された。途端にブツが回らなくなった。」

「売人グループと別の売人グループとのイザコザがあり対立しているそうだ。」


啓介の話が一段落したところで、友美はパフェを食べ終えた。

「密輸グループAと爺さんの属する密売グループBが取引していた。横山は別の密売グループCで、AとBの取引を壊して、CとAとの取引を望んでいた…」


友美は小首を傾げながら

「そうでしょうか?だったとすれば、何故春本先生のところまでいったのでしょうか?」


「…ん…?」


「横山が春本先生も密輸グループの一員或いは首謀者とみなしていた、とは思えません」


「じゃ目的はなんだ?」


「横山は覚醒剤組織とは関係なく、犯人に全て知っているからと、口止め料を求めたが断られたのではないでしょうか?」


「恐喝か…」


「証拠としては、あの本だけでしょうが、確実な証拠と言えるかどうか…」

「春本先生に言い付けて、揺さぶりをかけたか…春本先生を脅かしたか。あの先生思った以上に堅物だったと…」


「犯人だけでなく、密輸グループにとっても横山のような危険人物は排除しかありません。横山も用心していたでしょうが、組織的にかかられたら、ひとたまりもなかったでしょう」


「春本先生に知られたことで、春本先生も排除しなければならなくなりました。先生がいつも外出するなら交通事故を装うことも可能でしょうが、殆ど出かけないことで知られていますから、火急の事態なのに、いつ外出するか分からないからといってじっと待っている訳にはいきません」


「春本邸の中では、組織としてもやりにくいし、著名人ですからマスコミも派手に扱うでしょう。だから荒っぽい真似は自らの首を絞めることになります。春本先生と話をして丸く収めるか、排除するか…組織に指示されたか、犯人に任されたのか分かりませんが、結果として、春本先生が殺害されたと思います」


「犯人は何かを探していたと思われるが」


「ゴミ箱の紙まで伸ばして見ているという事は、探し物は何か書いた物と思われます。パソコンのメモまで見ているということは、おそらく横山と面会時のメモ書きではないでしょうか」


「しかし、それは春本自身がシュレッダーに掛けたはず…ということは、存在しないことを知らなかった人物ということか」


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