プロローグ
この小説はすべてフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
聞いたことのあるような地名・人物等が登場しても、それは読者であるアナタの思い過ごし・錯覚です。
プロローグ 1
少しづつ日が長くなりつつあるというものの、夕暮れの公園に、若い男が分厚い事典を抱えてベンチに座っている。
時間が気になるのか頻りに時計を見ている。
携帯が鳴って男が出ると、あたりをさっと見渡し、すぐに電話を切って急ぎ足で公園から出て行った。
公園を見渡せる少し離れたビルの階段からひとりの男が望遠レンズをつけたカメラのシャッターを連続して切っていた。
男はカメラから望遠レンズをはずし、再生画像を見ながらにんまりと笑った。
プロローグ 2
大通りに面したバス停のベンチに、子犬を連れて紙袋を持った一人の老人が座っている。
ポケットからジャーキーのようなものを取り出しては、子犬に与えていた。
後からコンビニ帰りなのかレジ袋をぶら下げた若い男がやってきて、老人に「可愛いワンちゃんですね」と声を掛けて横に座った。
若い男が子犬を抱き上げて戯れている間に、老人がコンビニ袋に手を入れ何かをつかみ出して味見をし、袋に返した。一瞬の出来事だった。
老人は、若い男から子犬を抱き取ると立ち上がり、若い男も釣られるように立ち上がって子犬の頭をなでてから立ち去った。
やがて老人も子犬をつれて立ち去っていった。
暇な老人が子犬の散歩の途中で、コンビニ帰りと思われる若い男が子犬とひと時戯れたというだけのように見える。
ただし、若い男は紙袋をもち、老人の手にはコンビニ袋があった。
少し離れた道路に駐車したメタリックグレーの乗用車の後部座席から、ひとりの男が超といえる望遠レンズをつけたカメラを覗いて、立て続けにシャッターを切り続けていた。