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陽の目を見ない唄

作者: ナユタ

とあるステージの下

太陽も気付いてくれない程

真っ暗なこの場所で

ひたすら支える

それが自分の仕事

全部わかってる




“誰もが主役に相応しい”

声に出して呟いた

誰にも聞こえないけど



ステージの上の主役

その人の熱い歌声

離れた所から観客の声援

自分には関係ない

興味もない


理由は簡単だ

自分にとってそこは陽が当たり過ぎている

今のままを望んでいる訳じゃない

こんな自分でも上の景色は見てみたいよ


“いつか輝ける日が来ると信じてる”

本気で言ったのか自分でもよくわからない



いわゆる縁の下の力持ち

上の方はどうぞ歌っていてください

あなたは自分のことを知らないかもしれない

自分はあなたを知ってます

それでいいのです




腕が辛くなってきた

耐え続けるからまだここに居させて

理由は簡単だ

迷惑をかけないことも仕事です


“後で笑って語れる思い出話になるでしょう”

慰める様に呟いた

惨めさには慣れている



ようやく太陽が顔を覗かせる

ステージの上は静まり返る

異変に気付いて顔上げた

マイクを持った人がいた


主役はマイクを差し出す

君も歌わないとダメだと

冷やかしだと思った

そこは自分の居場所じゃない

でも強引に渡された



縁の下を交代し

始めての大舞台へ

似たようなステージが沢山

観客はその景色の中

人の気も知らないで


笑われると思った

決して歌は上手くない

でも今更下がれない

ありのままの自分を

唄にするしか歌詞が無い




“誰もが主役にふさわしい

いつか輝ける日が来ると信じてる

後で笑って語れる思い出話になるでしょう”




曲の途中で観客が

合唱してくれていることに気付いた

ステージには仲間がいた

皆同意してくれる

さっきまでの主役の人も

縁の下で歌ってる


泣きながら大合唱

主役が誰かわからなかった

それはどうでもいいことだ


涙を拭って見えた景色

皆誰かのステージ支えてた

その人のステージも

その下の人のステージも

縁の下の下のステージも



続いてた唄を切り上げた

スポットライトを渡さなきゃ

まだここに立ったことのない人がいる

舞台を降りて縁の下の下へ


知らない人ではあったけど

実は上にいた存在の自分だったから

冷やかしだと思われたけど

君もすぐにわかってくれるから



マイクを渡して天井を支える  支えてくれた上の人の為に




上から聞こえる大合唱

その唄もやっと陽の目を見れた

陽の目を見なかっただけの唄

今回のテーマは「才能」。噛ませ犬、苦労人、脇役、ベンチ温め係。そんな経験ありませんか?

今回はかなりネガティブ短編に仕上がっていますが、得意でもないのにやらなきゃならない時も人生にはありますよね。

読点や句読点がないのは、曲のような雰囲気を出す為です。

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