番外編 主人公の活躍の裏で大人たちは
「さて。我が家の愛くるしい天使たちが、今日も今日とて国を平和に保ってくれているようだが」
リュキア王国の奥深く、公式な会議よりも重要な「国王夫妻会議」が開かれていた。
国王エドワード、王妃イザベラ、そして側室のアン。
この三人は、周知の通り〝王宮の平和の象徴〟と言われるほど仲が良いが…。
「エドワード様。リーシェは最近、王太女としての威厳に磨きがかかりましたわ。ラーナがいなくても婚約者のエリオット君をあんなに〝優雅に〟躾直すなんて、将来が楽しみですわね」
側室のアンが、実の娘であるリーシェを慈しむように微笑む。
「ええ、アン。でもルージュも負けていないわ。あの子の騎士団内での模擬戦でのあの冷徹な瞳…そして剣技…私の若い頃にそっくりで、つい見惚れてしまったわ」
正妃イザベラが、自らの腹を痛めたルージュを誇らしげに語る。
国王は、二人の美しき妻たちの会話に深く頷く。
「うむ。レオナとローズも、嫁ぎ先で〝狂犬〟…もとい、愛の守護者として名を馳せるのは明白だ。だが、問題は……」
三人の視線は魔法の鏡に映し出された末娘、ラーナに注がれる。
そこには、姉たちのために毒を吐き、権力を振りかざし、優雅に微笑む八歳の幼女の姿。
「ラーナは…天才だ」
国王が、震える声で感極まったように言う。
「八歳にして、姉たちのために〝自分を悪役に見せる〟という高等技術を使いこなしている。あの子のあの冷ややかな〝ゴミを見るような目〟! あれこそが、リュキア王国の未来を守る最強の抑止力だ!」
「本当ですわ、エドワード様。あの子がいる限り、我が国に不届きな者は一人も寄り付かないでしょう」
「娘たちの嫁ぎ先の隣国や辺境の国も、ラーナという〝最強の守護者〟を恐れて、あの子たちを一生大切にするでしょう。ラーナによる実質的な大陸統一も近いですわね」
王妃と側室は、うっとりとラーナの活躍を見つめている。
「では、国の今後についてだが」
国王は、真面目な顔で宣言する。
「ラーナが動きやすいよう、彼女の『毒舌』と『断罪』を全面的にバックアップする特別予算を組もう。我が国の国策は【姉妹愛こそ正義】。ラーナが成人する頃には、この大陸から我が子たちを貶める愚か者は絶滅しているはずだ」
「「賛成ですわ」」
三人の親たちは、未来への希望に胸を膨らまる。
彼らにとって娘たちが暴れ回る光景は、何よりも平和で何よりも幸せな〝リュキア王国の日常〟なのだ。
「さあ、ラーナに新しい『断罪用の扇』を特注しましょう。もちろん、隠し武器が仕込める最高級品をね!」
親たちの歪みない愛に支えられ、リュキア王国の〝過保護で苛烈な平和〟は今日も盤石なのだった。




