第52話「正義の重さ」
#第52話「正義の重さ」
しばらくして、休暇を取っていた担任が戻ってきた。
俺は心底安堵した。正直、教師の仕事量は俺一人では到底こなせないほどだったからだ。
ようやく日常が戻ったように思えた。
しかもそれも束の間だった。今度は別の生徒からまたもいじめの相談を受けたのだ。
「先生……僕いじめにあってます。お金を取られてるんです……」
心の中で「またか」と思った。いじめ問題。教師になってからこれで早くも二度目だ。
俺はその生徒の話を丁寧に聞き、「対応を考える」と言って一旦帰した。
――さて、どうしたものか。
前回はカメラやボイスレコーダーを使って証拠を集めたが、それが原因でモンスターペアレントに怒鳴り込まれ、担任の精神的負担にも繋がった。
あんな騒動は、もう繰り返したくない。
「……できれば避けたいな」
ふと、頭をよぎったのは「しばらく様子見」という選択肢だった。
適当に調査中と伝えて、自然と事態が収まるのを待つ。楽だし波風も立たない。
とりあえずは何もせず様子を見る、これが一番かもな。運がよければ本当にいじめが収まって何事もなく終わってくれるかもしれない。
だがその瞬間、俺の中に猛烈な違和感が走った。
――この考え、どこかで……?
その違和感の正体はすぐに分かった。
「これは……あの時の、村井だ」
高校1年の頃、俺が復讐を誓った担任教師・村井。
いじめを放置したことで俺はいじめられ続けた。他にも被害者がいただろう。
だから俺は彼を徹底的に追い詰め、転落させた。
俺は「正義」の名のもとに彼を裁いたのだ。
でも、あれは本当に正義だったのか?
もしかしたら村井も、教師という仕事に心をすり減らしながら耐えていたのではないか?
いじめの対応に苦慮し、俺と同じように葛藤していたのではないか?
そして思い出す、霧島先生の言葉。
――「あなた、やりすぎよ。確かに悪いことよ。でもその報いが『人生破壊』までやってしまっていいの?」
あの時は理解したようで全く理解していなかったと言えるだろう。でも教師の仕事を体験した今なら、その言葉の意味が痛いほど分かる。
教師という職業は、時に正しさと無力さの間で引き裂かれる。
村井は、苦しんでいたのかもしれない。それでも最善を尽くそうと努力していたのかもしれない。
それなのに俺は、その背景を想像すらせず一方的にいじめを放置する悪の教師として断罪していたのだ。村井は左遷となって……その後はきっと教師を辞めただろう。そこまで追い詰めて本当に良かったのか?
俺の「正義」は、本当に正しかったのか?
相手の立場を考えない自分勝手なとんでもない横暴だったのでは?
この胸の中のモヤモヤが、いま俺自身の在り方を問うているようだった。
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