第27話「期せずして佐藤への復讐を果たす」
#第27話「期せずして佐藤への復讐を果たす」
「黒崎君、ゲーム屋に一緒に行かないか?」
放課後、声をかけてきたのは佐藤だった。今回のタイムリープでは友達でもない佐藤からの誘い。なんとも不自然だなと思ったのだが……。
(あぁ……あのイベントか。忘れていたな)
1回目のタイムリープで俺は佐藤に誘われた。
そして、あの路地裏で……ヤクザに金を脅し取られ、殴り殺されて再びタイムリープしたんだ。
今回は親友になっていないからそんなイベントはないと思っていたのだが……何らかの強制力でもあるのか?
どちらにしろ丁度良い、復讐の機会が向こうからやってきた。
「いいよ、暇だしな。」
内心では舌打ちもしていた。
あのときは“親友”の言葉を信じた。
だが今は違う。佐藤はただの裏切り者だ。
知り合いをやくざに売ろうとするとんでもないやつというだけだ。反吐が出る。
(さて期せずして良い復讐の機会がやってきた。どう料理するか?)
いろいろと考えた俺は待ち合わせのファミレスにわざとヨレヨレのTシャツにボロボロのジーパン姿で行った。これでかなり貧乏人に見えるだろう。
「……その格好どうしたんだよ、黒崎君?」
「何言っているんだ?これは俺のいつもの私服だが?」
佐藤は小さく鼻で笑ったように見える。
俺を馬鹿にしてるのか、それとも後ろめたいのか。その顔を見て俺は確信した。やっぱりあの時と同じだ。
店を出て、ゲーム屋に向かうといって付いていった路地裏でやつらは現れた。
スーツに刺青が覗く、あのときと同じ空気を纏った“本物”のやくざだ。
でもあの時のように迫力は感じないな。何人かいるようだが俺が本気を出したら勝てるかもしれない。もちろんそんな無駄な喧嘩はしないが。
「……よう、坊やたち。楽しそうだな」
「ちょっと、俺たち金欠でさ、金貸してくれないかな?」
本当に言ってきたよ。
あのときと同じ台詞に、俺は笑いをこらえた。そして俺は弱気な学生を装う。
「……すいません、金なんか持ってないです。どうか許してください」
ヤクザの視線が鋭くなる。
「ちっ、なら財布出せよ。」
俺はポケットから、今回のためにわざわざ用意しておいた薄汚い財布を差し出した。どろどろで汚いからやくざは触るのも嫌がっている。
中には30円だけ。それを見てやくざは切れた。
「ふざけてんのか?」
「いえ、これが全財産です。今日はラッキーにも自販機の下をさぐって10円拾ったのでこれでも多いほうです」
「先月は100円拾ったんでその時に比べると残念だけど自販機の下って結構、お金落ちているんですよね。狙い目ですよ」
俺の話にドン引きしているヤクザたち。
一方で俺の横で佐藤が青い顔をしている。
「……お前、なんだこの貧乏人は?俺は金持っている人間連れてこいっていったよな?」
ヤクザの一人が佐藤の胸倉を掴む。
「いや……こいつなら金持ってるかもって思って……」
俺はすっと佐藤に顔を向けた。そして低い声で言い放ってやった。
「どういうことだよ、佐藤?」
「……ごめん。」
小声で絞り出すその声に、俺はほくそ笑む。
「すいません、お兄さん方。この俺は見た通りただの貧乏人です。俺に金なんかないです。でも佐藤の家は結構金持ちですよ」
ヤクザはにやりと笑い、佐藤を睨んだ。
「そのほうが話が早えぇな。ついてこい、佐藤。親の財布から金をくすねる方法を教えてやる」
俺はヤクザに小さく頭を下げた。
「俺はもう行っていいですか?」
「おう、その代わり黙ってろよ。他の人間に言ったらただじゃおかねえからな!」
「それはもちろん。佐藤なんて友達でもないのでどうでもいいです。わざわざ危ない橋は渡りませんよ。絶対に黙っています」
佐藤の視線が助けを求めていた。だが知ったことか。いい気味だ。せいぜい絞られてくれ。
翌日、教室に戻ると何事もなかったように机に座った。
しばらくして、ざわつきが広がる。なんかあっのか?
「おい、佐藤がヤクザに連れていかれたってマジか?」
「黒崎が一緒にいたんだろ?一人で逃げたって本当か?」
なんだ?この期に及んで佐藤は俺を悪者にしようとしているのか?どこまでもクズだな。ならば駄目押ししてやる。
俺は教室の前に立ち、淡々と言った。
「それは違うぞ。佐藤が俺をゲーム屋に誘ったんだ。でも、おれが佐藤に付いて行った先はゲーム屋じゃなくて路地裏だった」
「そしてそこにはヤクザが待ってたってわけだ。俺はヤクザにその時に持っていた財布と全財産を取られた。しかもやくざは『何でこんな貧乏人連れてきたんだ。金持っている奴を連れて来いっていったよな!』と佐藤にすごんでいたんだ。すなわち俺は佐藤に騙されついて行って金を取られた被害者だ。その後は知らん」
ざわめきが、佐藤への冷たい視線に変わった。
「おい、佐藤、どういうことだよ?噓ついていたのか?」
「自分かわいさに人売ったのか、佐藤……」
「最低じゃん。」
俺は佐藤に言い放った。
「俺の言っていることに何か嘘があるなら弁明は聞くけどどうなんだ?」
佐藤は口をパクパクして何も言えずに黙り込んだ。これで決着はついたな。
「みんなにも言っておく。佐藤に付いていくと、とんでもないことになるかもしれないから注意しろ。もしすでに被害を受けている奴がいたら俺に相談しろ。俺が本当のことだと証言してやる」
佐藤は青ざめた。もしかしたら他にも被害者がいるのかもしれない。
しばらくして1人が声を上げた
「黒崎、声をあげてくれてありがとう。俺も佐藤に騙されて……でもやくざが怖くて誰にも言えなかったんだ。俺もその時に持っていた全財産取られた。せっかく一生懸命にバイトして貯めたお金だったのに佐藤のせいで……」
まじかよ。本当にいたよ。
佐藤はうつむいて何も言えなくなった。席に逃げるように戻っていった。そりゃもう何も言えんだろう。これで学校は佐藤にとって針の筵だ。更に誰かが先生にもチクるだろうしな。
まあうまくいったし佐藤への復讐はこれでいいだろう。佐藤はこれで完全に終わった。
人を平気で裏切る奴には、居場所なんか要らない。
(これで一つ、期せずして復讐が済んだ。やはり、物理的に強くなるとこは大事だな。今回もそうだったが何かあっても余裕を持って対応できる)
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