第24話「教室の乱闘と冷静な制圧」
#第24話「教室の乱闘と冷静な制圧」
「キャーッ!」
教室から響いた甲高い悲鳴に、俺は本を閉じた。
まあ、どうせくだらない喧嘩だろう。放っておいてもいいけど……
ちらりと見やると、2人の男子が掴み合い、軽く殴り合っていた。まさしく素人の喧嘩という感じだ。机が倒れ、周囲が騒然としている。教師の姿はない。
……仕方ない。面倒だが止めてやるか。おれは格闘技を始めてから3か月、体力に技術といろいろと仕込まれて軽く自信を持っている。
俺は静かに立ち上がり、喧嘩している2人の間に割って入った。
「やめとけ。喧嘩はどっちもどっちだ。つまらんことで怪我すんなよ」
「何を?黒崎ごときがなめるな!」
片方が勢いで拳を振りかぶってきたが、俺は軽くかわし、関節を決めた。
「俺は格闘技をやっているからな。これ以上動くなよ。簡単に折れるぞ?」
怯えた目で見上げる相手に俺はゆっくり言った。
「降参しろ。これは“ケンカ”じゃない、“事故”にした方がいいだろ」
相手は黙ってうなずき降参の意思をしめした。そこで俺は力を抜いた。もう片方にも目をやる。
「お前も、これ以上は損するだけだ。わかったな?」
実力差が分かったようでこちらも黙って頷く。
「とりあえず2人共、喧嘩するなら外でやれよな。教室内では迷惑がかかる」
そう言うと2人は静かに立ち去っていった。騒然としていた教室は、再び落ち着きを取り戻す。
「黒崎、すげーな。簡単に喧嘩を仲裁したぞ」
「黒崎君、凄い。かっこいいかも」
小声ながらも賞賛の声は気持ちのいいものだなと俺は満足していた。
——だが、それで終わらなかった。
放課後、俺は担任に呼び出された。
「黒崎、お前……一方的に暴力をふるったらしいな」
は? 俺は喧嘩を止めただけだぞ?
「いえ、喧嘩を止めただけですが?」
何を言っても聞く耳を持たず、一方的に説教を続ける担任、俺はもう面倒になってきた。はいはい、もう好きにすればと説教を聞くふりだけしてスルーした。
何か問題があった時、教師は自分のお気に入りの生徒からの言うことを妄信する傾向にある。
そして一旦信じてしまうと間違いを簡単には認めない。間違っていたら大問題だからな。ここで俺一人がいくら説明しても無理だろう。多少は腹が立つが諦めた方がいいな。反論するだけ時間の無駄だ。
その後ホームルームになり、担任が言い放った。
「喧嘩は絶対に駄目だ。黒崎のようなことをしてはいけない」
はあ、またか。ほんとしつこい教師だな。
でも、そのとき——
「先生、それは違います!」
佐々木だった。立ち上がり、担任を睨む。
「黒崎くんは喧嘩を止めただけです。私は見ていました。むしろ感謝されるべきです!」
「いや、でも……」と口ごもる担任。すると他の生徒たちからも追撃の声が。
「私も見てました!」
「黒崎、すげーって思った!」
「喧嘩する2人を止めて、喧嘩するなら外でやれと諫めてただけなのに何でそんな話になっているの?」
あれま完全に風向きが変わったな。
「先生は何も見てないのに一方的に生徒を断罪するのですか?見損ないました!」
「黒崎君が暴力をふるったとか誰に聞いたんですか?」
「先生は卑怯だ!」
ああ、これは決め手になりそうだ。
担任はたじたじになり、ついには「黒崎、すまなかった……」と謝ってきた。
それでも生徒たちの怒りは治まりそうにない。
俺はそこで発言した。
「みんな庇ってくれてありがとう。本当に感謝する。でもこの件で先生を責めるのは違う。それはやめてほしい」
「先生は凄く忙しいから大変なんだ。一方的な話を聞いしまうと判断を間違うこともある。これ以上責めるのはやめてくれないかな?」
——まったく思ってもいないことを言いながら、俺は満足していた。
先生はやや目を潤ませて「黒崎、本当にすまなかった……そして庇ってくれてありがとう」とか言っている。
他の生徒も「黒崎、あそこで先生を庇うとかすげーな」「凄いことやっているのに自慢しない、理不尽なことを言われても怒らない、かっこいい」と俺を賞賛してくる。
これで教師に恩を売った。評判も上々、悪くない展開だ。
怒られ損だと思ったが……思いのほかうまくいったな。
それに、実践は貴重だ。
いざという時、自分がどう動けるか試す良い機会になった。少なくとも素人の武器のない喧嘩ならもう相手にならない。俺は間違いなく強くなった。
喧嘩も、情報も、人間関係も——冷静に、合理的に使いこなせればいい。
さて、次はどんなイベントが待ってるかな?
俺に危険さえ無ければ積極的に介入してやる。
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