18話「ゲームじゃない、現実なんだ」
#18話「ゲームじゃない、現実なんだ」
ずっと感じていた違和感の正体に、俺はようやく気づいた。
――俺は、水川との恋愛を“ゲーム”のように扱っていたんだ。
最初は助けて、気を引いて、恩を売って、距離を詰めて、関係を深めて……
まるで恋愛シミュレーションのイベントをひとつひとつクリアしていくみたいに。
そして最後に、彼女の全てが自分のものになったと感じた。
(クリアだな。さて次はどうする?次は誰だ?次のルートは?)
そんなふうに、達成感すら覚えていた。
でもそれでは本当に“ゲーム”だ。
本来の恋愛は、クリアなんて概念がない。
リセットも攻略ルートもない、ただひとつの道を歩く現実だ。
俺は――水川の弱みに付け込んだだけだったんじゃないか?
生活が苦しいことを知っていた。
だから助けた。
その結果、信頼を得た。それはいい。
だが、それに“見返り”を求めていた自分がいる。弱みに付け込んだんだ。
水川が俺を信じてくれたのは彼女の中に確かな気持ちがあったからだ。
けれど俺は、その気持ちを自分の都合の良いストーリーに当てはめて進んできただけなんだ。
「……俺は、なんてことを……」
罪悪感が押し寄せる。
彼女が前世の時に考えていたような人間だったらまだ良かった。
しかし現実は違った。彼女は不幸な中でも懸命に生きていた。努力していた。外見だけでなく内面から本当に美しい人だ。俺はその人生を踏みにじっただけではないのか?
だけど同時に、否定する自分もいる。
――俺の気持ちは本物だった。
水川を好きだと思ったのは打算じゃない。
助けたいと思ったのも彼女を幸せにしたいと思ったのも本心だった。
俺は良いことをしただけだ。そしてそれに彼女は答えてくれただけだ。
他の人間だってそうだ。そうやって女を攻略しているじゃないか。
水川だって、あんな顔で笑ってくれた。
本心で俺のことを好きだと言ってくれた。
お互いにそれで幸せならば何の問題もないはずた。このまま2人で幸せになれる。
だけど――それでも。
気づいてしまった。
自分の中で「ゲームクリア」という感覚が間違いなく存在していたことに。
心の中で、いろんな思いが交差する。
罪悪感、後悔、自問、否定、肯定、そして恐れ。
(……俺は、彼女に何をしてしまったんだろう)
どこで間違った?
そうだ。俺は彼女が貧乏だったことを知った時だ。あの時に気が付くべきだったんだ。彼女は攻略対象ではないと言うことに。
いや、本当はすでに気が付いていたはずだ。だから最初のタイムリープでは復讐しなかったじゃないか。気が付いていたのにその違和感を自分の欲望のために隠していただけだ、、、。
その日から、俺は水川の顔をまともに見られなくなった。
彼女は変わらず、俺の前で笑っていた。
いつも通りの屋上。いつも通りの甘い時間。
でも――俺の心は、もうあの日と同じではなかった。
幸せの絶頂から、一転して、出口の見えない迷路に迷い込んだようだった。
どうしたらいいのか分からない。
今のこの感情が、過去の罪を悔いているのか、
それとも、未来を守ろうとしているのか――
俺はまだ、答えを見つけられずにいた。
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