14話「修学旅行の通知と一万円の封筒」
#14話「修学旅行の通知と一万円の封筒」
春の風が少しずつ暖かくなり、屋上の空気にも柔らかさが増してきた。
水川と並んでパンやサンドイッチを食べる日々が、当たり前のように続いている。
「……ほんと、いつもありがとう。迷惑ばっかりかけてる気がする」
「俺が好きでやってんだよ。気にすんな」
「でも……やっぱり、ね」
彼女は申し訳なさそうに笑う。その笑顔が最近は少し増えてきた。
それだけで、俺は充分だと思っていた――。
だが、現実はそう甘くなかった。彼女の笑顔を消す事件が起こった。
「水川と佐々木。修学旅行の積立金、まだ出てないな。水川は先月の分もな。明日には必ず持ってきてくれよ」
朝のホームルーム。新しい担任が無造作に口にした言葉。
その瞬間、水川の背中が小さく震えた。
俺の席からでも、その“びくん”という反応が分かった。
(やめろ、先生。教室で言うことか、それ。ほんと人の気持ちが分からないクズだな)
空気が一瞬、凍った。
クラスメイトたちは軽くざわついたが、すぐにどうでもよさそうに自分の話題へ戻っていった。
けれど、水川の心には――確かに、深い傷が刺さった。
俺はその日の昼もまた、屋上で彼女と顔を合わせた。
サンドイッチを食べる彼女の手が、かすかに震えていた。
無理に笑おうとしても、目元の陰は隠しきれない。
「……どうした?」
「……別に」
水川は俯いたまま、それ以上言おうとしなかった。
俺はポケットから、一枚の封筒を取り出した。
中には、一万円。先週の日曜日に競馬で換金したばかりの金の一部だ。
「これ。とりあえず、払っとけ」
「……え?」
「修学旅行の積立金。先月分と今月分で、ちょうど一万円くらいだろ?」
水川の顔色が一気に変わった。
「な、なに考えてんの!? こんな大金……!」
「今日、バイト代入ったんだ。気にすんな」
「そんなわけないでしょ!あなたいつもバイト代が入ったばかりって言っている!」
「……返すのは別にいつでもいい。卒業して働くようになってからでもいい。俺は本当にバイトしているんだから何も気にしなくてもいいよ」
「……」
「それが無理なら、返さなくてもいい。別に、見返り求めて渡してるわけじゃねえから」
沈黙が流れる。
そして次の瞬間――。
「……ばか」
水川の目から、ぽろりと涙がこぼれた。
俺は動かなかった。ただ、そのまま隣に座り続けた。
水川は俺の胸に顔を埋め泣いていた。
「ありがとう……ありがとう……本当に、ごめん……ありがとう……。誰にも頼れなくて……言えなくて」
彼女の手は、しっかりと封筒を握りしめていた。
――そうだ。
こうやって、少しずつでいい。
心の奥に入り込み、居場所を作っていく。
俺は、やり直す人生の中で、ようやく本当の「誰かを助ける」ということの意味を知り始めていたのかもしれない。
努力して頑張っている人間、そういった本当に報われるべき人間が不幸になるなんておかしい。俺はそういった人に手を差し伸べるべきなんだ。
不思議にも満足感を覚えた。もしかしたらこれが本当の幸せというやつかも。
今回のタイムリープで、、、今度こそ俺は幸せに人生を生きることができそうだ。
ただ、そういった満足感と共にわずかながら説明の付かない違和感もあった。
何かがおかしい。そう思いつつも大きな満足感で隠れていてその時の俺はまだ気が付かなかった。
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