第14話
ひさしぶりの非番の日、後藤象二郎は単身で京都の街を散策していた。
時代は大政奉還、王政復古の大号令を経て、後藤は土佐藩士から新政府の参与に出世していた。
六角通りを西に進み、大宮通りで南に曲がる。
すると四人の侍が抜刀して後藤を取り囲む。
「何者だ」
後藤が言う。
「われら攘夷志士なり。逆賊のおぬしを斬る」
侍の一人が言う。
後藤も仕方なく腰のサーベルを抜刀する。
慶応四年(1868年)、パークス襲撃事件が起きた、
後藤は多くの警官とともに英国大使パークスが天皇に謁見する途上を護衛したところ、攘夷志士と名乗る二人組の侍が襲いかかって来た。
警官がすぐ逮捕してことなきを得たが、それ以来、後藤は攘夷志士と名乗る輩から嫌がらせを受けるようになった。
なお、この警護の功績で後藤は英国ヴィクトリア女王からサーベルを賜り、以降、日本刀にかわりにサーベルを腰に下げるようになった。
どこからともなく手裏剣が飛んできて、攘夷志士の一人を倒す。
振り向くと八尺の巨人が佇んでいる。
髪に白いものが混じった初老の男だ。
巨人は長刀を抜刀し、後藤をかばうように三人の攘夷志士たちの前に出る。
「やっちまえ」
攘夷志士の一人が言う。
二人の攘夷志士が同時に巨人に斬りかかる。
巨人はそのうちの一人の侍と一合刀を切結んだ後、返す刀でもう一人を斬る。
三人目の侍が後藤に襲い掛かる。
後藤はサーベルで応戦し、どうにか相手を倒す。
その間、巨人はすでに生き残った方の侍の首をはねている。
大宮通りには四人の死体と血の海が転がる。
「どなたか存じませぬが」
後藤が巨人に言う。
「助けていただき、ありがとうございます」
「後藤じゃろう。りっぱになったなあ」
巨人が言う。
「おれを覚えとらんか」
後藤はふと少年時代の記憶が蘇る。
「師匠ですか。大石進種昌師匠」
「思い出してくれたか。いいか、後藤。おまえが身に着けた大石神影流は天下無双の剣術。だれにも負けることはない」
種昌はそう言うと、きびすを返し、どこへともなく姿を消した。
(つづく)




