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社務所と呼ばれる建物は、一見すると普通の住宅とそう変わりはない。
玄関を上がって右手が授与所となっており、おみくじやお守り、お札、ご朱印などを購入できる。
いわばグッズショップだ。
六畳ほどの畳の部屋で、腰高のガラス窓があり、窓越しに参拝客とやりとりする。
授与所の奥には事務机があり、ここで寄付者名簿や会計管理など、神社運営に携わる事務を行っている。
歩にとってはショップも事務も業務範囲外なので、掃除以外で足を踏み入れることはない。
玄関の左手には応接間があり、奥に居間、台所、トイレ、浴室、洗面所といった居住空間がある。
二階は四つ和室があり、廊下の右手奥が梅子、右手前が桃香、左手奥は空き部屋で左手前が歩の寝室だった。
「神社のバイトって、どういうことしてるんだ?」
台所で桃香がお茶を淹れている間、応接間のソファーに腰かけた足立は声をひそめて言った。
「掃除」
「それだけ? 他は?」
「飯作ったりかな」
「なるほど。まかないね」
と頷きながらも、足立はきょろきょろと落ちつかなさげに周囲を見回している。
顔色が悪く、心ここにあらずといった様子だ。
「制服とかないの?」
「ない」
歩は端的に応じる。
御剣神社に作務衣の類は置いていなかったので、歩はジャージやジーパンにTシャツといった服装で働いていた。